首里城正殿の外観復元が完了、素屋根内で全貌公開へ 清水建設ら3社JV:プロジェクト
清水建設/國場組/大米建設JVが進めてきた、首里城正殿の正殿の外観復元工事が完了した。焼失から5年9カ月を経て、首里城正殿外観の全貌が公開された。
清水建設は2025年8月8日、首里城正殿の復元整備工事について、外観復元が完了したと発表した。内閣府沖縄総合事務局の発注を受け、清水建設/國場組/大米建設JVが進めてきたもので、焼失から5年9カ月を経て、色や形など往時の輝きを取り戻した。
復元整備工事では、2025年4月7日に正殿外部の上塗り(仕上げ塗り)工事を本格的に開始。7月下旬から屋根材の解体に着手し、8月6日には素屋根の中に設置していた2層の作業床を完全撤去して正殿の屋根全体があらわになった。8月中旬以降に外壁材を順次解体し、正殿の全貌がメッシュシート越しに徐々に見えるようになるという。
2025年10月末には素屋根外周の足場の解体を終え、西之廊下と南之廊下の復元に着手する。いずれの廊下も柱/梁(はり)の主要部材は檜造りで、塗装には久志間切弁柄を用いて往時の着色を再現する計画だ。木工事は社寺建が担当、瓦葺きは島袋瓦工場が、漆塗り塗装は漆芸工房が行う。工事完了は2026年秋頃の予定。
「見せる復興」をテーマに工事を推進
清水建設らJVは2022年11月の着工以来、発注者が掲げる復元整備工事のテーマ「見せる復興」に全面的に協力してきた。木材加工場の巨大なガラス窓や素屋根の北西角の見学スペースから、常に復元の様子が見学できる。着工当初は来場者の視線に対し、職方から「目が合ってしまい、仕事がやりづらい」といった声も聞かれた。しかし、時間の経過とともに見学者の視線に慣れ、手を振る子供に応じる職方の姿も見られるようになったという。
首里城公園を管理する内閣府国営沖縄記念公園事務所によると、2020年6月12日の設営以来、奉神門につながる復元整備工事の見学ルートには約520万人の見学者が訪問した。清水建設らは引き続き、見せる復興に協力していくとともに、無事故/無災害での竣工を目指す。
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