奥村組とNTT-FT、女性活躍の本音を議論 異業種交流で見えてきた「空気」や「理解」の壁:けんせつ小町(2/2 ページ)
建設業と通信業、それぞれの現場を支える女性たちが集まり、働く環境や制度の“使いやすさ”を互いに語らう場が開かれた。奥村組とNTTフィールドテクノの女性社員が参加し、冷却ベストや作業靴といった支給品の工夫から、生理休暇の取りづらさまで現場の「リアル」を忌憚ない声で共有した。制度そのものよりも、「どう使えるか」「周囲の理解があるか」が鍵という気付きが、共通課題として浮かび上がった。
女性社員同士の率直なディスカッション、“現場課題”を共有する場に
インタビュー後、両者の女性社員によるグループディスカッションを実施した。テーマは「熱中症対策」「安全対策」「女性ならではの悩み」の3つ。
熱中症対策では、NTTフィールドテクノが導入している“水を入れて冷却するベスト”が話題に。屋外作業が多い奥村組の参加者から「ぜひ現場でも取り入れたい」との声が上がった。
安全対策では、1人作業の有無が両社で異なることに驚きの声も。NTTフィールドテクノでは単独で個人宅訪問を行うことが日常的だが、奥村組では原則2人以上で作業する体制が取られており、「1人で現場に出るのは怖い」との声も聞かれた。支給品が所属部署によって異なる点については、「同じ会社なのに現場ごとに支援の差があるのはおかしい」との問題提起があり、見直す必要性を共有した。
他にも、「体調不良時の休暇申請が周囲に見える形で表示されるのがつらい」「生理休暇は制度としてあるが、利用しづらい空気がある」といった悩みも率直に語られた。参加者の1人は「制度があっても、使えなければ意味がない。声を上げにくい職場の空気を変えていくことが必要だ」と発言し、多くの共感を呼んだ。
グループごとの発表では、以下のような意見を共有した。
- 職場に女性がいることが当たり前になったと感じる一方、妊娠や更年期など“ライフイベントと両立できる環境整備”が次の課題
- 生理や妊娠など、身体的な事情を抱える女性にとって、体調不良を正直に申告しやすい空気づくりが必要
- 冷却ベストの導入、日傘/空調服の選択肢など、支給品のバリエーションも多様性に対応すべき
- 建設現場でも、手が小さい人向けのグローブなど、体格にあった支給品の整備を
- 制度はあっても周囲の目が気になって使いづらい。だからこそ、制度の周知と「使ってもいい空気づくり」が欠かせない
- 「こんなこと言っていいのかな」と思うことこそ、声にして伝えていくのが第一歩
こうした意見が共感とともに広がったのが、今回のディスカッションの大きな意義だったように筆者は思う。
明日からの現場が変わる、小さな気付きと行動の積み重ねを
今回の意見交換会では「制度」だけでなく、「空気」や「理解」が女性活躍の鍵を握ることが再確認された。現場課題に対しては、「気づいた人が声を上げて変えていく」ことの大切さと、その声を「拾って制度に反映する企業姿勢」が求められることが示された。
閉会あいさつでは、奥村組 ダイバーシティー推進部 小林氏が「女性社員だけでなく、男性管理職への教育や情報共有も欠かせない。今日の学びを持ち帰り、明日からの現場で実践していくことが大切だ」と呼びかけた。
業種を越えた交流が、一過性のイベントに終わらず、今後の連携や変革につながることを期待したい。
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