過疎化の進む郊外の団地をデジタル技術で活性化、大和ハウス工業が実証実験:xR
大和ハウス工業は、過疎化が進む郊外型住宅団地で、空間拡張システムを用いたコミュニティー活性化に関する実証実験を開始した。リラックス効果のある映像/音響の共有体験や、遠隔地の食や文化などの魅力を一緒に疑似体験できる機会を住民に提供する。
大和ハウス工業は2024年4月17日、兵庫県三木市の郊外型住宅団地「緑が丘ネオポリス」で、仮想空間や遠隔地とつながる空間拡張システムを利用してコミュニティーの活性化を促す実証実験を開始した。実証では空間内の様子を捉えるセンシング手法を活用し、仮想空間での体験が利用者に与える影響も分析する。実証期間は2025年春まで。
空間拡張システムの活用がコミュニティーの場の創出につながるかを検証
実証を行う緑が丘ネオポリスは、開発から既に50年近く経過し、住民の高齢化や人口減少、空き家の増加といった課題を抱えている。課題解決に向けて、2015年8月には、産官学民が連携する「郊外型住宅団地ライフスタイル研究会」を設立。自動運転によるコミュニティー内移動サービスの実証実験や、コミュニティー施設の設置などを進めている。
今回実証を開始するにあたって、地域住民67人との意見交換を実施し、さまざまな世代がいつでも集まり、交流できる仕組みが必要とされていることが明らかになった。そこで大和ハウス工業は、コミュニティー施設に空間拡張システムを導入し、効果を検証する取り組みを開始した。
実証実験では、デジタル映像と自然音で仮想空間を再現する「XR技術」を活用する。居合わせた住民同士の交流を活性化するため、古都風景や古民家の室内など日常に溶け込む4種類のデジタル映像をプロジェクターで投影する他、雨音やいろりで薪をくべる音などリラックス効果のある自然音を複数のスピーカーから立体音響として流すなど、居心地の良い空間を演出する。
また、遠隔地とのコミュニケーションの場づくりとして、複数のスピーカーやプロジェクター、ビデオ会議システムを導入し、道の駅や他地域のコミュニティー施設と接続して、現地の実寸大の映像や環境音などを伝える。第1弾として、大阪府南河内郡河南町の「道の駅かなん」とコミュニティー施設をつなぎ、食に関する遠隔地の魅力を伝えてもらう。期間は2024年4月17日から2024年4月24日まで。2024年5月以降は、住民の要望に応じた場所やテーマを設定していく予定だ。
この他、実証実験では、発話モニタリング用のマイクやカメラ、表情分析センサー、温湿度/CO2濃度センサーなどの各種センサー技術を導入し、仮想空間の体験や遠隔地との映像/環境音の共有が利用者に与える影響を、来場者へのアンケート評価や各種センシングデータとの相関関係をもとに分析する。また、仮想空間の体験や、遠隔地との空間共有の実施時と未実施時の効果を比較して、来場者の滞在時間や居場所の選択、世代間交流の発生状況などの傾向を検証する。
空間内の様子を捉えたセンシング結果をデータベースとして蓄積/分析することで、将来は、地域コミュニティーの活性化に寄与する空間拡張システムの開発を目指す。
大和ハウス工業は、実証実験での結果をもとに、空間拡張システムを拡張し、行政サービスの告知や企業による商品販売の仲介などにもつなげていく。
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