災害救援に特化したエアロセンスの国産VTOL機、前後に主翼の“タンデム翼”採用:Japan Drone 2025(2/2 ページ)
エアロセンスは、国産ドローン初の垂直離発着(VTOL)機を開発した機体メーカーとして、測量や監視、災害後の被災地確認などの用途で機体と関連システムを数多く開発してきた。「Japan Drone 2025」ではレベル4飛行に対応し、前後に主翼を持つ“タンデム翼”のVTOL機「AS-H1」を披露した。航続距離は最長250キロで、最大13キロまでの救援物資を空輸できる。
高い安全性を確保するため、重要機能を“二重化”
AS-H1の航続距離はペイロードなしだと250キロ、10キロ積載した状態で120キロは自動飛行する。
ドローンの運用で重要となるのが通信機能だ。エアロセンスでは、機体との通信を確実に、これまで複数の通信手段を併用した方法で技術を蓄積してきた。AS-H1には、通信を含め、安全のためのノウハウが複数投入されている。
VTOL機の飛行で注意すべきなのは、進行方向の前方に障害物を発見した場合だ。AS-H1には、機体内に前方250メートル先まで探知可能なレーダーを搭載している。危険を検知すると、その場で緊急ホバリングする。
他の特徴では、センサー類やフライトコントローラーを二重化している点がある。特にフライトコントローラーは新しく設計し、通常時に稼働するプライマリーコントローラーと、問題が発生したときに処理を引き継ぐセカンダリーコントローラー、それらをモニタリングするヘルスモニタリングコントローラーを装備している。そうした万一のときのバックアップを考慮した設計思想は、電源にも適用し、4つのバッテリーによる冗長性と安全性を確保した。
AS-H1は、国土交通省に対して「第一種形式認証」の申請を完了した。今後は審査が進むが、エアロセンスは実証実験のパートナーやペイロードを開発する機体メーカー各社からの問い合わせや相談を待っているという。
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