日立が原発をメタバース空間に再現、設計から資産管理まで業務効率化:メタバース
日立製作所は、メタバース空間上に原子力発電所を再現した「原子力メタバースプラットフォーム」を開発した。点群データと3DCADデータを融合させたプラットフォームを活用し、電力事業者や施工会社などと情報共有や工程調整を行い、新規建設から保全、廃止措置に至るまでの一連の業務効率化を図る。
日立製作所は2025年7月9日、点群データと3DCADデータを重ね合わせ、メタバース空間上に原子力発電所を再現した「原子力メタバースプラットフォーム」を開発したと発表した。
複数ユーザーがメタバース空間の原発に同時アクセス可能
メタバース空間は、3DCADの設計情報と現実の発電所をスキャンした点群情報を組み合わせて作成した。点群データの密度調整やレンダリング機能で、設備情報を明瞭に確認できる。設備機器を半透明にして隠れている箇所を表示することも可能で、設備機器の設置検討や図面との相違点の発見が視覚的に分かる。
オンライン会議を開催できる他、メタバース空間に複数ユーザーが同時に入れるため、設計から現場施工、資産管理に至るまで、関係する電力事業者や工事施工会社などとの間で現場情報のリアルタイム共有が実現する。仮に3DCAD側で設計変更があっても、即座に反映されるので、常に最新の情報にアクセスできる。
メタバース空間ではAI活用で、自然文による設計図書の全文や類語を検索可能で、数多くの設備の中から必要な情報を探し出せる。寸法測定やオブジェクト配置機能を使えば、既存設備との干渉チェックも行える。設備にさらに、設備オブジェクトへのメモの貼り付け、現場で撮影した動画や画像などのファイル添付などにも対応する。
セキュリティ面では、アクセス許可を得たユーザーのみがログイン可能な仕組みで、通信は全て暗号化されており、安全なコミュニケーション環境を確保している。
日立製作所は今後、プラットフォームをベースに、設備状態などの現場データを集約する計画だ。故障の事前検知や設備状態の将来予測を行うことで、最適な投資計画やプラント保全計画の立案を支援するなど、データに基づく意思決定を実現する「データドリブン発電所」の構築を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
メタバース:鴻池組旧本店と企業ミュージアムをメタバース上に再現
鴻池組はメタバース技術を活用して国の登録有形文化財「鴻池組旧本店」や企業ミュージアムの歴史展示コーナーを再現し、一般公開した。メタバース:除雪作業と足場組立のメタバース型安全教育コンテンツ公開、長岡技術科学大学
長岡技術科学大学は、除雪作業と足場組立のメタバース型安全教育コンテンツを公開した。製品動向:福島第一原発の廃炉作業に3Dデータ処理技術活用、bestatが提供
bestatは東京パワーテクノロジーの福島第一原子力発電所廃炉作業向けに、3Dデータ自動生成サービス「3D.Core」を提供した。原発内作業空間の一部と放射線量分布マップを生成する。産業動向:業界特化AIのメタリアル、建築/不動産メタバースのSTUDIO55を子会社化
業界特化型専門文書AIを開発するメタリアルは、建築デザインのVRやCG、BIM分野で専門技能を有するSTUDIO55を子会社化した。BIM:BIMデータと高精度3D測量活用、建設業向け「空間シミュレーションサービス」開発へ TOPPANとnat
TOPPANホールディングスと高精度AI測量アプリ「Scanat」を展開するnatは、資本業務提携を締結し、建設業界向けにミリ単位の高精度3D空間シミュレーションサービスの共同開発に乗り出す。メタバース:大成建設が進めるBIMによるメタバース合意形成システム UI/UXはゲーム開発のネイロが担当
ネイロは、大成建設が開発を進める次世代業務システム「建設承認メタバース」プロジェクトで、UIとUXのコンサルティングを開始した。ゲーム開発の知見を生かし、3DCGを活用した直感的なメタバース空間での合意形成を可能にする。