建設現場に仮設全館空調、完成建物のダクト活用で熱中症対策 大林組:安全衛生
大林組は、施工済みダクトに大型仮設空調機を接続する仮設空調システムを構築し、都内でのオフィスビル建設現場に初適用した。
大林組は2025年7月11日、建設現場の熱中症対策として、建物完成後に使用予定の空調ダクトを活用し、地上に設置した仮設空調機(高圧ファン型モービルクーラー)から冷気を供給する「涼人(りょうじん)プロジェクト」を構築したと発表した。2025年7月上旬から東京都中央区日本橋のオフィスビル新築工事に適用している。
プロジェクトでは、完成建物の空調稼働前に全館空調を行う。竣工後空調に使用するダクトに仮設機器を接続して各階につなぎ、電動ダンパーを使用して一定時間ごとに冷風供給エリアを切り替え、作業内容や進捗に応じて冷却する。試行現場では4台の仮設空調機を導入した。
改正労働安全衛生規則が2025年6月に施行され、事業者には熱中症対策のための体制整備や手順作成、関係者への周知が義務付けられた。建築現場の新築工事では、構造部分が組み上がり、外壁などが取り付けられた建物内部は高温多湿となり、作業者の熱中症リスクが高まる。
大林組はこれまでもファン付き作業服やリストバンド型の体温検知デバイスの装備を現場入場の条件とするなどの独自ルールを設けてきたが、気候変動による猛暑の増加を受け今回のプロジェクトの試行を開始した。
大林組では、WBGT値が25以上、または気温が31℃以上の現場では、連続作業時間を最大50分に制限し、10分の休憩を義務付けている。今回のプロジェクトでは室温を28℃程度に保つことを目標とする。これにより、技能者の身体負荷や熱中症リスクを軽減するとともに、猛暑日でも通常同様の作業サイクルを維持可能とする。
今後は大林組の設計・施工プロジェクト提案において、発注者と協議の上、基本設計段階で夏場の工事に涼人プロジェクトの導入を盛り込み、来期以降は対象現場を順次拡大する方針だ。
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