「建設業の完成工事高は10年間で23.5%増も、就業者数は30万人減」2024年の建設市場と人材動向【独自分析】:建設業の人材動向レポート(59)(2/2 ページ)
本連載では、総合人材サービス会社で建設業向けの人材サービスを展開するヒューマンリソシアが、独自に調査した建設業における人材動向を定期レポートとしてお届けする。建設業従事者の人材動向に関する実態を解明し、建設業各社の採用・定着に向けた戦略を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。今回は、2024年の建設市場と建設人材の動向について、各種データをもとに分析した。
■2024年の元請受注高は前年比7.7%増、建設市場は中期的にも堅調
続いて元請受注高の推移を国土交通省の「建設受注動態調査」で分析すると、2023年は民間工事の受注が落ち込んだことから前年比3.3%減の72兆7293億円だったが、2024年は民間工事の受注が回復し、同7.7%増の78兆3567億円に達した(図表3)。受注高が大幅な増加に転じたため、中期的にも建設市場は堅調なのではないかと推測される。
■建設業の就業者数は直近の10年間で30万人減少
一方、建設業の就業者数は、10年間で大幅に減少している。総務省の「労働力調査」によると、建設業の就業者数は2014年の507万人から2024年には477万人となり、10年間で30万人も減少している(図表4)。
2014年の建設業就業者と完成工事高を100として指数化すると、2014年には完成工事高は123.5(23.5%増)なのに、建設業就業者数は94.1(5.9%減)で、建設市場の拡大に就業者数が追い付いていない。生産性向上が進んでいるとしてもなお、人材確保は今後の建設市場の成長で、喫緊の課題だといえるだろう(図表5)。
■建設技術者と技能工の有効求人倍率は高止まり
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で、建設現場を支える建設技術者と建設技能工の有効求人倍率は、2024年の建設技術者は5.57倍、建設技能工は5.12倍という非常に高い倍率で高止まりしており、人材の新規採用が困難な状況にある(図表6)。採用難は厳しい状況が続き、近々の改善見通しは立ちづらいことから、人手不足が建設市場成長の足かせにならないように、将来を見据えた採用や定着への人材戦略を立てることが重要になる。
著者Profile
ヒューマンリソシア
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