北海道「ZEB Ready」校舎にクラウド型中央監視システム スマホ操作で教員負担軽減:FM
内田洋行は北海道中富良野町に開校予定の義務教育学校「なかふらの学園」に、クラウド型中央監視システムを構築した。校舎は北海道の小中学校で初めてZEB Ready認証を取得し、一次エネルギー消費量を60%以上削減する。
内田洋行は2025年6月3日、北海道中富良野町に同年8月開校予定の義務教育学校「なかふらの学園」に、校舎全体の建物設備を管理/運用する中央監視システムを構築したと発表した。システムの導入により、エネルギーの最適管理と先進的な学びを支える学習環境の両立を図る。校舎は省エネ性能に優れた建築物として、北海道の小中学校で初めて「ZEB Ready」認証を取得している。
校舎はSR造、地上3階建てで、建築面積は3988.07平方メートル、延べ床面積は9579.20平方メートル。設計は柴滝建築設計事務所、建築工事は軽米/北菱/那知特定建設工事共同企業体、電気工事は東邦/藤下特定建設工事共同企業体、設備工事は木本/東洋/後田特定建設工事共同企業体が担った。
校舎は、外壁/屋根/窓の断熱性能強化の他、躯体蓄熱、地中熱/太陽光の活用、蓄電池、BEMS(Building Energy Management System)など導入により、一次エネルギー消費量を基準から60%以上削減できる設計となっている。
中央監視システムはクラウド環境に構築し、空調や照明、太陽光発電設備などの運転状況を一元管理する。ZEB Readyの取得/運用に必要なエネルギーの計測を行い、規定データの自動作成機能を開発することで補助金に関する報告業務の効率化にも貢献する。IT系のAPIやモジュールを利用した連携が可能で、段階的な機能拡張により新校舎の運用状況に柔軟に対応する。教職員は冷暖房や照明、体育館の防球ネットなどの設備をスマートフォンから遠隔操作でき、授業準備の負担軽減につながる。
校内には、リアルタイムでエネルギー消費状況を表示する「エネルギーサイネージ」を設置した。児童/生徒が日常的にエネルギーの仕組みを学ぶ環境教育の教材として、授業での活用も予定している。中央監視システムでは操作履歴やエネルギー使用量をもとに、空間ごとの稼働状況や利用傾向をグラフや帳票で可視化。運用改善に活用する。
内田洋行は中央監視システムと併せて、北海道産木材を使用した学校用の机椅子の導入、図書館システムの導入など学校空間全体の総合的な構築支援を実施した。
校舎は将来の人口変動や教育の多様化に対応するため、高い可変性と拡張性を備えて設計した。教室の一部には可動式の間仕切りや移動可能な家具を導入し、教育活動の変化に応じた柔軟な空間利用を実現。不登校の児童/生徒に配慮した教育支援センターも校内に整備し、目線や動線に配慮した安心して過ごせる空間として設計した。
また、北海道産木材を積極的に活用。木製のテーブルやイスを多目的スペースなど自動/生徒が自然と集まり交流する場に配置した。
図書館環境については、学校図書館と隣接する公共図書館「中富良野町図書館」との共通図書館システムを導入。蔵書約2万5000冊にICタグを貼付し、児童/生徒は複数冊をセルフで貸し借りできる。蔵書点検の効率化や司書、教職員の負担軽減に加え、図書利用データを活用した読書環境の向上にも寄与する。
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