建設テック企業が結集! 業界の課題に挑む「建設DX研究所」とは?【新連載】:建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(1)(2/2 ページ)
建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。本連載では、建設DX研究所のメンバー各社が取り組む、建設DXの事例や技術開発について詳しく解説していきます。
2.勉強会の開催
建設DXに関する議論やノウハウの提供を行い、建設業界関係者がDXについて学び、実践的な知識を深める機会を定期的に設けています。毎月、建設DX研究所の定例部会として勉強会を開催し、参画企業だけでなく、建設DXに関わるスタートアップや有識者などのゲストを招き、講演も実施しています。
2024年12月には、建設DX研究所の活動報告と建設DXのさらなる推進を目的とした交流会イベントを開催しました。イベントには、スタートアップの他、国土交通省や竹中工務店、大成建設の担当者にも登壇いただき、業界関係者70人以上が集い、建設DXの最前線を体感する場となりました。
3.政策提言
建設DXの推進には制度的な支援も欠かせません。建設DX研究所は、建設業界のDXを推進するために、政府や関係機関との連携を図りながら、具体的な政策提言活動を行っています。中でも、中小企業の現場の実態や生の声を政治に届ける活動に力を入れています。例えば、行政手続きのデジタル化/簡素化による現場の負担軽減や遠隔臨場のさらなる普及に向けた政策的後押しなどを議論しています。
2024年5月30日に総理大臣官邸で開催された「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」では、中小建設事業者に対する建設DXツールの導入支援や補助金制度の創設について提言しました※6。その結果、岸田文雄前総理から建設DX推進に向けた激励の言葉をいただくとともに、中小企業庁のカタログ型省力化補助金の支給対象を建設業にも広げる方針が示されました。
※6 アンドパッドプレスリリース「建設DX研究所が総理大臣官邸で開催された「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」で発表」
これまでの活動を通じて建設DXの重要性が広く認識され、参画企業や関係者のネットワークも拡大してきました。こうした発展を踏まえ、2025年3月にはさらに5社の建設テック企業が研究所のメンバーに新たに加わりました。新メンバーはAIインフラ管理、AR/VR、建機自動運転などの最先端技術に強みを持つ企業です。新たな視点の多様化により、技術交流やイノベーション創出の機会がさらに広がることを期待しています。
建設業界の未来をDXで切り拓く
建設業界は、人手不足や労働生産性の低さ、就業者の高齢化という大きな課題に直面しています。こうした課題を解決する鍵となるのがDXの推進です。建設DX研究所は、DXの導入を加速させることで、建設業界の未来をより持続可能なものにすることを目指しています。
そのためには政府や民間企業、業界団体と連携しながら建設DXの普及を進め、業界全体の変革を実現しなければなりません。
今後も、これまでの活動を継続かつ発展させるとともに、新たなメンバーと共にDX推進の取り組みを強化し、建設業界のさらなる発展に貢献してまいります。
本連載では、今後の回で建設DX研究所のメンバー各社が取り組む建設DXの事例や技術開発について詳しく紹介していきます。次回以降の内容もぜひご期待ください。
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