標準化と“言葉の壁”克服が鍵、ジョンソンコントロールズ オフショア開発の舞台裏:海外人材活用(2/2 ページ)
ジョンソンコントロールズが推進するオフショアリング戦略が、エンジニアの働き方改革や生産性向上に成果を挙げている。今後、データセンター向け制御事業にもオフショアリングを拡大するため、インドから2人のエンジニアが来日。来日の目的やオフショアリング成功の秘訣について、日本法人の担当者に聞いた。
OJTを通じ業務理解を深化
ただし、これまでのオフショアリングは、単純作業の委託が多くを占めていた。アプリケーション作成プロセスの一部分を切り出し、独立した機能単位(機能ブロック)で完結する作業を手順書に基づいて依頼するといった方法をとっていた。
日本に来た両氏には当初から、日本でのOJTを通して標準化の取り組みやアプリケーション開発プロセスに関する知識を共有。同じオフィスで業務に当たるだけではなく、実際に施工現場に足を運ぶ機会を設けるなど、さまざまなプログラムを用意して業務への理解を深めてもらった。
「日本の物件で重視されるポイントや日本での業務の進め方などを共有する時間を持てた。業務全体の流れに対する理解を深めてもらったことで、新たな業務を依頼する際にバックグラウンドから説明をするような状況が解消されつつある」とシダルタ氏。
また、今後オフショアリングをより良くしていくための議論の機会も設け、これまでの成果や課題点などについてディスカッションした。メンバー同士でランチに行く機会を設けるなど雑談できる機会も作り、コミュニケーションの円滑化にも配慮した。
「GCEメンバーとの対面のOJTは今回が初めて。オンラインでのやりとりと異なり相手の状況が把握しやすく、疑問点があればすぐに声掛けして解消できる。両国間のコミュニケーションを深められたようだ」とシダルタ氏は語った。
成功の鍵は「標準化」と「言語の壁を超える」
ジョンソンコントロールズにおいて、オフショアリングが順調に拡大できた要因の1つが標準化の取り組みだ。以前は同一システムであっても、支店ごとに異なるデザインの操作画面が使用されるなど、全社的な統一がされていなかった。そこでまずはグラフィック要素の標準化に着手し、オフショアリング推進の基盤を整えた。
エンジニアリングプロセスでも同様に標準化を推進した。シダルタ氏によると「例えばPLCソフトは複雑な構造をしているものの、基本的には機能ブロックの組み合わせで構成されている。従来はエンジニアによって、ブロックの配置位置や線のつなぎ方に個人差が生じていたが、標準化により解消することで、緊急の修正要請にも誰でも迅速に対応できる体制が整った」。標準化の推進は品質向上にもつながっており、修正依頼が減少したことで、過去2年で13%の手戻りを削減した。
オフショアリング開始当初、日本のエンジニア、特にベテラン層の中には、職人気質で外部への業務委託に抵抗感があるメンバーもいたという。マインドセットの変化に多少時間を要したケースもあったが、業務標準化によりフェーズごとの業務範囲が明確になったことで委託のハードルが下がり、徐々に抵抗感が薄れていった。
もう1つのオフショアリング拡大の鍵として「言葉の壁がないこと」が挙げられる。GCEの日本チームは現在30人程度。メンバーはインドの現地採用だが、そのうち8割が日本語能力試験(JLPT)に合格しており、業務の依頼を含むオンライン上のコミュニケーションは基本的に日本語で行われている。日本語が分からないメンバーも翻訳機能などを使って業務に当たっている。
「英語だけのコミュニケーションでは行き違いが生じたり、意思疎通に時間がかかったりすることもある。英語が堪能なメンバーばかりではないため、日本語で依頼できることで、業務委託がスムーズに進んだ」とシダルタ氏は説明した。
さらに、日本とインドという異なる国の文化を両方とも熟知しているシダルタ氏の存在は大きかった。例えば、出荷日の調整を行う場合、日本では納品時間まで決めて正確に守ることが求められるが、GCEへの委託開始直後は日付が変わる直前の夜中に納品が行われるようなケースもあった。こうした感覚の違いについて、シダルタ氏が間に入って調整することで徐々に行き違いをなくしてきた。
2020年にオフショアリングがスタートしてから、2024年までに現地のサポートメンバーは5倍に増加、移管時間は約6倍になった。今期は前年対比1.5倍の移管を目指している。
オフショアリングの拡大は人手不足による業務負担を軽減し、国内の限られたエンジニアを高付加価値業務へ集中させられるようになるため、サービスレベルの向上に寄与する。また、日本とインドの時差をみると、日本時間が約3時間半早い。日本のエンジニアの終業時刻に合わせてGCE業務を引き継ぐことができ、業務標準化により引き継ぎに要する手間も減っているため、エンジニアのワークライフバランス向上にもつながっている。
今後もジョンソンコントロールズでは両国のエンジニアが互いの強みを生かしながら、グローバル競争力の強化と顧客サービスの向上を目指していく。
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