2025年度のICT施工原則化で、コマツが3D施工の標準モデルと位置付ける次世代ICT建機:ICT建機(3/3 ページ)
2025年度から国交省の直轄土木工事のうち、「土工」と「河川浚渫」で小規模でも発注者指定を基本としてICT施工が原則化される。建機メーカーのコマツはこうしたICT施工の拡大に対応すべく、運転席のモニターに設計図データと自機位置などを表示する施工サポート機能「3Dマシンガイダンス」を標準搭載した次世代3D施工の標準機を提案する。
建機周辺360度の安全を確保するカメラシステム
安全性も進化し、現場内の建物や木などに近づくと自動停止する「ジオフェンス機能」を装備している。作業を制限するエリアの設定方法は、モニター平面図をタップするだけ。仮想境界線で囲んだエリアのジオフェンス付近では、旋回速度が遅くなり、接近すると停止する。水平方向だけではなく、高さ方向も設定できるため、電線や地中埋設物との接触を防止する。機体からの距離範囲で制御する従来方式と異なり、3Dの仮想空間内に壁を作成するので車両が移動しても設定を修正しなくて済む。
他にも、4台の高精細広角カメラで建機周囲の360度をモニターに写す「KomVision機械周辺カメラシステム」、人や物を検知した場合に自動で減速または停止する「KomVision衝突検知ブレーキシステム」、転倒の危険性がある姿勢だと警報を発する「転倒検知警報システム」も備える。GNSSアンテナは、障害物との接触による故障や盗難を考慮して車体に埋め込み、日々の着脱は必要ない。
メンテナンス性では、フィルター類などの点検部品は地上から点検可能なレイアウトに刷新。作動油の交換で5000時間から6000時間、KDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)清掃で4500時間から8000時間、作業油フィルターの交換で1000時間から3000時間とインターバル延長により、メンテナンスコストが20%削減する。
PC200i-12の公表価格は3150万円(工場裸渡し、税別)。販売目標は日本国内だけで年間1000台を見込む。
2024年末に開催したPC200i-12の発表会で常務執行役員 建機マーケティング本部長 西浦泰司氏は、「建設業界が直面する課題は、深刻な労働力不足、自然災害の激甚化、インフラの老朽化の3つがあり、政府は課題解決のために3D施工の普及を進めている。当社は2013年に世界初のマシンコントロールによるブルドーザー、翌2014年にマシンコントロールの油圧ショベルを市場投入し、2015年からはスマートコンストラクションで業界をリードしてきた」と説明。
今回の新型機については、「顧客とともに現場を変えたいとの強い思いを胸にPC200i-12を通じて、3D施工の標準化を目指したい」と新機種に賭ける意気込みを語る。
執行役員 スマートコンストラクション推進本部長 四家千佳史氏は、「コマツのスマートコンストラクションは、2024年11月末までの累計で国内約3万現場、海外約1万現場で導入されている。3D施工は地方自治体の工事や中小規模の工事では、費用対効果の懸念や準備の大変さなどを理由に普及が進んでいない」と問題点を指摘。
対してPC200i-12は、「3Dマシンガイダンスを標準装備しており、3D施工を追加費用なく準備なしで始められる。そのため、3D施工のさらなる普及をけん引するモデルとなる。今後のソフトウェアのアップデートで、i-Construction 2.0の施工自動化、遠隔操縦、さらに無人化といった機能も拡充し、生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場を実現していく」と展望を口にした。
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