デロイトが分析、なぜ大和ハウス工業が“建設DX”の先頭にいるのか? 守りから攻めのDXへ:大手ゼネコンの建設DX戦略(3/3 ページ)
大手の建設業各社は、設計段階のBIM活用を皮切りに、建設生産プロセス全体でデジタル変革を目指しているが、一品受注生産などが理由となって柔軟に対応できている企業は多くはない。そうした中でDXの波にいち早く乗った大和ハウス工業は、“守りと攻め”のDX戦略を展開し、設計、製造、施工、維持管理をデータドリブンで連携するなど、他社に先駆け、デジタル変革が実現しつつある。
“守りのDX”から“攻めのDX”の段階へ
大和ハウス工業 上席執行役員 技術統括本部 副本部長 建設DX推進統括担当 河野宏氏は、DX施策の現況を報告した。
DXの取り組みは当初、2017年に「BIM推進室」が発足したことを皮切りに、BIM活用を中心にスタート。現在は「建設DX推進部」と名を変え、コンストラクション部門と、BIM部門に分業して全社のデジタル変革に挑んでいる。
施策としては建設プラットフォームを軸に据え、積極的にBIMなどのデータの活用と蓄積の両輪で取り組んできた。河野氏は「現在はデータを貯めるフェーズが進み、攻めの収益モデルの構築へと入った」とする。
大和ハウス工業は、建設DXを設計BIMからスタートし、施工、製造へと適用を順次拡大してデータベースに蓄積してきた。貯まったBIMデータをICT施工や遠隔管理へと生かし、さらに再度設計へとフィードバックしていく「デジタルループ」の構造を思い描く。「当社はプレハブメーカーとして、建築の工業化に取り組んできたが、BIMで改めて次世代の工業化を目指したい」と河野氏は語る。
設計段階では現在、BIMを用いて仕様セレクトツールやプレゼンゲートウェイ、標準詳細図一括抽出、一貫構造計算ソフト連携など多様なツールの導入が進み、「活用に濃淡はあるが、先行開発してきたものは80〜90%程度導入している」(河野氏)。
施工分野では、戸建て住宅や集合住宅の施工現場ではペーパーレスに向けた物件ポータルサイトの活用が80%を超え、時間短縮に向けたダッシュボード活用や工事写真アプリ、施工管理支援アプリなどが普及している。
定着の効果も出てきており、遠隔での映像を用いた施工管理は、戸建て住宅の約4200現場で92%が利用。IoT機器の利用率は、集合住宅の約2400となる施工現場の全てで活用されるなど、目に見えてデジタル化の定着が進んでいる。
今後の展開については、営業担当者が建物の原価を共通データベースに蓄積した情報からすぐに引き出せるシステムの整備に着手。同時に建設プラットフォームで蓄積したデータを川上から川下へと波及させていく仕組みも強化する。河野氏は「創業から続く『早く、良く、安く』の理念を大切にし、顧客にとって価値ある提案を目指したい。今まで蓄積したデータを活用していく時期に入ってきた」と意気込む。
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