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データセンター事業で売上2〜3割増、業界の人手不足にも対応 ジョンソンコントロールズ2025年事業戦略(2/2 ページ)

ジョンソンコントロールズは2025年の事業戦略について、建設ラッシュが続くデータセンターや、地方の大型製造施設などの高成長市場へ引き続き注力すると明らかにした。2024年の振り返りと2025年の事業戦略について、代表取締役社長 吉田浩氏が語った。

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人手不足対応は急務に

 施設管理分野についても「工場への投資が進む一方、メンテナンス人員が不足している」と説明。例えば生産ラインを3本から4本増やせば保守対象も増えるが、生産能力が増加してもメンテナンス人員が増えるわけではない。「投資した生産設備が完成する頃には、メンテナンス作業を行う人員の高齢化がさらに進んでいる。メンテナンスにおける生産性を高めるのは急務だ」(吉田社長)。 

 人手不足に対し、施設管理分野では、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を備えたBAS「Metasys(メタシス)」と独自のデジタルソリューション「OpenBlue(オープンブルー)」を核とした技術を提供し、業務効率化を支援している。

 2024年7月には「Metasys Release 13.0」の国内出荷を開始。Webベースのシステムで汎用PCやスマートフォンから操作でき、セットアップの手間も抑えられる。オープンプロトコルを採用し、さまざまなメーカーのシステムとの統合監視も可能にした。UI(ユーザーインタフェース)も改良し、より直観的な操作を実現。吉田氏によると「ビル管理会社は人手不足で、社員の高齢化も進み、後継者育成が難しい状況にある。直感的にビルの状態を把握できる画面が求められている」と話す。Release 13.0は系統ごとに設備機器を表示し、トラブル発生時には関連する設備を一覧で表示。稼働状況の確認や運転/停止をワンクリックで行えることなどが特徴だ。

直観的な操作を可能にするRelease 13.0のUI
直観的な操作を可能にするRelease 13.0のUI 出典:ジョンソンコントロールズ

 また、遠隔保守サービス「OpenBlue RDR」についても「2024年にはかなりの数の契約をいただいた」と吉田社長が口にするように、顧客のシステムを遠隔で常時診断して保守の負担を軽減できる点が高く評価されている。2025年4月の契約更新時期に合わせて定期保守メニューの改変も予定しており、リモート保守とオンサイト保守を組み合わせたハイブリッド点検を標準型とする予定だ。 

 先行して、2024年11月には「OpenBlue Enterprise Manager」の拡張機能を発表。新たにユーザー向けの生成AIアプリケーションを追加した。

自社リソースも最適化 若手への技術継承も課題に

 対外的サービスだけでなく、自社組織のリソース最適化も目標に掲げる。垂直市場の変化に加え、地方での大型案件の増加に伴い、支店単位ではなく全社レベルで人員を最適化するためにマトリクス組織を導入。さらに、自社組織のインドCoE(センターオブエクセレンス)とともに、業務の標準化と集中化にも取り組んでいる。インドCoEには日本語でコミュニケーションがとれる日本市場専門のインド人エンジニアのチームがあり、2024年10月からの2カ月間はエンジニアが来日して対面でさまざまなノウハウの共有を進めている。

 事務業務などについては、社内生成AIの活用も推進する。全社員のPCに自社専用AIをインストールし、活用方法の研修も実施。業務効率の改善にも寄与している。

 熟練技術者から若手への技術承継やノウハウの継承も課題の1つだ。吉田氏は「熟練技術者の持つ技術やノウハウを全て文書化するのは難しい。ベテラン技術者の頭の中に蓄積している技術や経験をいかに次世代に引き継ぐかは大きな課題だ」と語る。ジョンソンコントロールズでは数年前から、ベテラン社員と若手社員を組ませることで、技術やノウハウの継承を進めてきた。既に技術を受け継いだ若手社員が業務をリードする立場になりつつあるという。

 人材育成については、実機研修施設も拡張する。「Metasysの実機研修は従来簡易的なモデルで行っていたが、本格的な実機を用意する。まずは社員の技術研修に使用し、将来は協力会社の技術者も、希望があれば受け入れていきたい」(吉田氏)。

 建設工事全体の効率化も進める。吉田氏は「ゼネコンと協議し、制御システムに関する電気工事の発注先を当社から電気サブコンに変更してもらうなど、当社がより多くの案件でサービスを提供できる形態を試行錯誤している。社内だけでなく、関係者を巻き込んだ建設生産システムの改善や、新たなビジネスモデルの構築を目指している。製品についても、できるだけ現場作業を減らし、施工の効率化と省力化につなげていくことも今後の課題だ」と述べた。

建物の脱炭素へ向けて

 世界の炭素排出量の約4割は建物に起因している。2024年4月には大規模非住宅建築物の省エネ基準が引上げられ、顧客の脱炭素化の要求や関心は高まっている。吉田氏は「当社の事業そのものがビルの省エネに関連することであり、今まで以上に効率の高い制御システムを提供していくことはもちろん、OpenBlue Enterprise Managementの提供を強化することで、顧客のサステナビリティレポーティングを支援していく」と述た。

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