横浜市がドローンとIoTセンサーによる水道事業の遠隔巡視に乗り出す NTT Comが自動巡回を支援:ドローン(1/2 ページ)
横浜市とNTTコミュニケーションズは、配水ポンプ場の点検をドローンの自動巡回で遠隔から実施する実証実験に成功し、従来の手法と比較して点検時間を削減できること確認した。2024年11月19日、実証事業の内容やドローンの飛行デモンストレーションについて、報道陣に公開した。
横浜市水道局は、ICT(情報通信技術)を活用した効率的で持続的な配水ポンプ場の維持管理方法の確立へ向けて、保土ヶ谷区の仏向(ぶっこう)ポンプ場で、ドローンとセンサーを活用した遠隔巡視の検討を開始した。
現行の職員による巡視をドローンの自動巡視で代替する他、職員が聴覚で確認しているポンプ軸受け部の劣化状態をIoTセンサーで常時監視。取得した画像データと振動、温度データは、クラウドを通して職員が遠隔地から確認する。現場に出向く回数の削減に加え、技術の形式知化などにより、ポンプ設備巡視点検の省力化を目指す。
2024年10月には、NTT コミュニケーションズが提供する屋内用ドローンポート「Skydio Dock」と低軌道衛星を利用した衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business」を組み合わせ、ドローンの自動巡回により配水ポンプ場を点検する実証実験に成功。従来は月1回実施する点検をリモート化に置き換えることで、市内23カ所の配水ポンプ場の点検時間の削減が期待できることを確認した。
実証試験は2025年3月まで実施し、2024年度内に結果をまとめる。遠隔巡視の有効性が確認できた場合、年1カ所をめどにドローンとセンサーを設置。2028年度以降は運用状況をふまえ、全ての配水ポンプ場を対象に順次導入する計画だ。
職員4人が1ポンプ場あたり1日をかけて巡視点検
横浜市は市域全体が起伏の多い丘陵地帯で、高台の家まで安定的に水道水を供給するためには、多くの地域でポンプによる配水が必要となる。ポンプ設備が故障すると大規模な断水につながるなど市民の給水に影響を及ぼすことから、横浜市水道局では月1回の配水ポンプ場の巡視点検を実施し、設備の健全性を維持している。
点検作業は職員約4人が1ポンプ場あたり1日をかけて実施し、異常の有無を五感で判断する。具体的には漏水の確認や水質計器の校正作業の他、通常と異なる振動を検知した場合は給油(グリスアップ)などを行っている。
一方で、現在の巡視点検手法には課題があった。執務室がある浄水場から配水ポンプ場へは往復で最大2時間かかり、移動に多くの労力を費やしている。また、異常判断は経験に基づく技術力が必要となるが、多数のベテラン職員が退職を控えており、従来の維持管理手法の継続が困難になることも想定されている。そこで横浜市はポンプ場の遠隔巡視に向けた検討に着手した。
実証を行う仏向ポンプ場は1973年に設置、2018年に電気設備や機械の更新を行っている。給水エリアは保土ヶ谷区と旭区の一部にあたる約3万1500戸。排水ポンプ台数は5台、配水池貯水量は2万立方メートル。通常時は常用線と予備線による2系統受電、停電時は非常用自家発電設備によるバックアップにより、非常時でも安定して水を供給できる体制を構築している。
今回の実証実験では、ポンプ場内をドローンがあらかじめ設定した飛行ルートで巡回し、指定した箇所でホバリングしながら画像を撮影。また、ポンプと電動機にIoTセンサーを取り付け、振動や温度などのデータを自動で計測する。撮影や計測したデータは職員が執務室から確認。異常を検知した場合は職員が現地へ向かう。また、振動データが指定した値よりも高くなり、ポンプの劣化の兆候が表れた場合はメールでも通知する。
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