沖縄発LiLzが高砂熱学と開発した「IoT×AI」遠隔点検サービス 専用カメラは満充電で3年間稼働:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024(2/2 ページ)
LiLzは、沖縄科学技術大学院大学や琉球大学出身の研究者やエンジニアが集結し、2017年に沖縄のITベンチャーからのカーブアウトという形で創業したAIスタートアップ企業。「機械学習とIoTの技術融合で、現場の仕事をラクにする」をミッションとし、高砂熱学工業と共同で、バッテリー駆動だけで3年間稼働するIoTカメラと計器の値を機械学習で解析するクラウドサービス「LiLz Gauge」を開発した。
電源とネットワークの工事不要で、約3年間は連続稼働
LiLz Gaugeは、設置時に電源やネットワーク回線の工事が要らない。現場に設置して長期間運用する機材には電源が必須で、収集したデータをデータベース化するには、機材からデータを吸い上げる仕組みも必要だ。カメラのLiLz Camは、防塵(じん)/防水(IP65)に加え、内蔵のリチウムイオンバッテリーによる長期稼働とLTE通信の機能を備えている。
特にバッテリーは、1日に3回の解像度で640×480程度のデータ取得であれば、充電やバッテリーの交換をしなくても約3年もの長期間運用できる(設置環境、撮影解像度などの条件で異なる)。LiLz Camを満充電で一度設置してしまえば、数年間はメンテナンスなしで計器の表示をリモートで取得できる。
そのため、LiLz Gaugeであれば電源の有無を問わず、必要な場所に複数のカメラを設置できる。電源の確保はあらゆる装置を設置するときのポイントだが、電源が要らないだけで導入の心理的ハードルは低くなる。
専用カメラのLiLz Camは、計器から最小5センチ、望遠レンズ使用で最大5メートル離れても読み取りが可能だ。キュービクル内の計器をガラス越しに外部から読む場合、計器の正面にカメラを設置すると人が現場で計器を読む際に邪魔になる。そうしたケースでも、望遠によりキュービクルから離れた場所から斜めに計器を狙う場所にカメラを設置できる。
予防保全の範囲を広げる、防爆カメラとサーモグラフィーカメラ
栗本氏は、高い気密性を備えた防爆エリア対応カメラのLC-EX10とサーモグラフィーカメラのLC-T10も紹介した。
防爆カメラは、リルズカムの防爆エリア対応バージョンともいえるもので、防爆機能が求められるエリアで計器の読み取りを可能にする。防爆タイプでありながら重さ約515グラムの軽量とクラス最小の幅約130×縦156ミリのサイズを実現し、LiLz Cam同様に1日3回の撮影で約3年間稼働する。LC-EX10はNETIS(新技術情報提供システム)に登録されている。
サーモグラフィーカメラは、-10〜400℃という広い範囲内で温度を取得する。温度の緩やかな変化を検知することに特化し、発火の予防や高圧ガスの漏れ検知に役立つ。ベルトコンベヤーの摩擦確認や堆肥を扱うリサイクル施設での温度確認、太陽光発電施設の制御装置の発熱監視などでの用途が想定されている。
導入成果を試せる“スタータキット”を用意
LiLz CamやサーモグラフィーカメラのLC-T10には、“スタータキット”が用意されている。スタータキットは、導入前にユーザー自身が遠隔監視の使い勝手を試せる。カメラ本体の他に充電用ケーブル、三脚、任意の時間に撮影する装置を含む。オプションには、カメラ取り付け用のクランプやマグネット雲台がある。スタータキットは、LiLz Camの場合は1カ月レンタルで2万8000円(税別)。栗本氏は「テスト機は最短5営業日で提供できる」とアピールした。
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