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無償利用の人工衛星画像とAIで、NECが札幌市の水管橋を点検 ドローンよりも低コスト:スマートメンテナンス
NECは、無償利用可能な人工衛星画像やAIを用い、水管橋の異常点検に関する実証実験を実施した。ドローン点検で生じる撮影コストを掛けずに、多頻度での計測が可能となる。
日本電気(NEC)は2024年10月28日、無償利用可能な人工衛星画像やAI(人工知能)を用いて、水管橋の異常点検に関する実証実験を実施したと発表した。
ドローンを用いた点検作業と比べ、撮影コストをかけず多頻度な計測を実現
NECは以前、落橋につながる重大損傷を発見する技術を開発しており、今回はその技術をベースに、無償利用可能な人工衛星画像を用いたリモートセンシングとAIを組み合わせて、水管橋の異常な変位を発見する技術を開発した。
実証実験は2024年6月から9月にかけて、札幌市水道局がフィールド提供した豊平川第2水管橋(全長234メートル、支間長117メートル×2径間)で行った。水管橋の橋軸変位や鉛直変位を誤差約5ミリで計測し、本水管橋に垂れ下がりの傾向が無いことを確認した。
また、疑似的に形成した3ミリ以上の垂れ下がりの検知もシミュレーションで確かめた。その結果、水管橋の異常発見に活用できることが証明された。
実証では、12日間隔で観測される人工衛星画像を用いて、2016年以降の8年分のデータを分析し、ドローンを用いた点検作業で生じる撮影コストを掛けずに多頻度で計測している。
水管橋では、目視またはそれ以上の方法による点検が定められている。目視点検では長大な水管橋への接近が難しく、特殊車両が必要となるため、高額な作業費用が課題となっている。また、ドローンを用いた点検の検討も進んでいるものの、操縦に長けた作業員の確保や作業費用が課題となっている。
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