「誰一人取り残さない熱中症対策」カナリアのようにリスク警告する腕時計型デバイス:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024(2/2 ページ)
スタートアップBiodata bankが開発した熱中症対策ウォッチ「カナリア Plus」は、特別なセッティグが不要で、装着するだけで熱中症リスクを感知するとアラートで警告を発するデバイスだ。シンプル機構のデバイスは、熱中症対策ギアの新標準に成り得るのか。
シンプルな操作性で誰でも簡単に熱中症リスクを検知
カナリア Plusの最大の特長は、その使いやすさにある。操作方法は極めてシンプルで、作業前に本体側面のボタンを押し、緑のLEDランプの点滅(正常動作時は15秒に1度点滅)を確認した後に、腕時計のように腕に装着するだけで使用可能になる。BluetoothやWi-Fiなどで専用アプリに接続する必要がなく、すぐに熱中症対策を開始できる。
デバイス装着中に装着者(作業者)の身体から熱中症リスクを感知すると、赤い光を発するとともに本体が振動して警告を発する。警告を受けた作業者は一時的に作業を中断し、塩分や水分の補給、休憩をとることで身体の状態を整える。作業者の状態が落ち着き、本体のランプが緑に戻ったら、再び現場作業に戻れる。
ブース担当者はカナリアのシンプルな機構の意図について、「複雑なデバイス操作を苦手とする作業者や日本語でのコミュニケーションに課題のある外国人労働者など、現場は多様化している。そうした作業者全員が熱中症対策から取り残されることがないように、誰でも簡単かつ即座に使用できることを重視した設計になっている」と説明する。
カナリアは内蔵バッテリー使い切りタイプで、電池交換や充電の手間も必要ない。内蔵バッテリーの持続時間は約5カ月と長く、厚生労働省が5月から9月まで実施する「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の期間も動く。
熱中症対策の新たな標準へさらなる進化を遂げるカナリア
カナリアシリーズは、販売開始から国内外2000社を超える企業が利用している。その導入実績の裏には単なる機能性だけでなく、現場の実態に即した設計にあるようだ。ブース担当者は、「作業者は自ら休憩を申し出るのが難しい場合もある。カナリアのアラート機能で、客観的な指標に基づいて休憩の必要性を伝えられるようになり、結果として休憩がとりやすい環境が生まれる」とその効果を話す。
利用企業からも高い評価の声が寄せられている。例えば、日々多くの作業者が出入りする現場では、個々人の状態把握が課題となっていたが、カナリアの“装着するだけで熱中症対策”というシンプルな仕様により、管理の負担が大幅に軽減されたという。他にもデバイスの導入が作業者の予防意識の向上や予防行動の促進につながったなどの効果も報告されている。
好評につき、展示会開催時には既にカナリア plusの2024年度分の販売を終えており、現在は2025年度を受付中だ。また、2025年度モデルはさらなる性能向上も予定されている。
シンプルかつ十分な機能を持つカナリア。今後どのような進化を遂げるのか、注目だ。
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