BIMが一過性のブームで終わらないために 空虚化する“フロントローディング”の根本原因【現場BIM第8回】:建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(8)(3/3 ページ)
2009年の“BIM元年”から15年が経過し、BIMは確実に浸透してきているが、各社で「BIM疲れ」が出てはいないだろうか。そこで今回は、日本のBIMの現在地を「BIM活用の本当の受益者は誰か」という基本的な問いから再確認してみたい。
発注者のトランスフォーメーション(BIM-DX)
日本の建設工事発注者(施主/オーナー)と受注者(ゼネコン)間の契約は、ランプサム方式(総価請負契約)が一般的。誤解を恐れずに平たくいうと、概算見積で金額と工期が決定され、その枠内であれば変更も修正も勝手にお任せというわけだ。言い換えると発注者に変更リスクがなく受注者である元請(ゼネコン)以降がリスクを負っている負の状態だが、現代日本の状況に鑑みると持続可能なやり方ではないことは明らかで、発注者の施主やオーナーにはまずこの認識を持っていただきたい。海外ではほとんどが、設計変更イコール工期延長またはコストオンが当たり前!
BIMを語る前に、設計変更が自由な慣習をやめなければならないことを抜きにして「フロントローディング」は語れず、むしろ完全にバズワード化し、むなしい響きを醸し始めている(BIMを使った早期の干渉チェックくらいの使い方に矮小化されている感が否めない)。
日本の建設産業における生産性の低さについては、製造業とよく比較され、大量生産ではなく一品生産だから仕方ない的な論調をいまだに耳にする。それは発注者を神様=お客さまとして蚊帳の外に置き、ゼネコンを頂点としたヒエラルキーを前提とした物言いであって(それでも言い訳に聞こえるが)、発注者を“真のステークホルダー”と位置付け、発注者起点の業界構造に転換(トランスフォーメーション)していくべきだ。そこにまだ世の中の注目が集まっていないように見えるのには不安を覚える。
発注者を真のステークホルダーとして発注者起点の業界構造に転換
業界全体でBIM推進のモチベーションは、“発注者次第”という段階に差し掛かってきている。先の問い「BIM活用の本当の受益者は誰か?」の答えは「発注者」となるわけだが、当の発注者がその意味を理解しきれていないのが現実だ。ここに業界としての「BIM疲れの壁」が大きく立ちはだかっている。これまでゼネコンが矢面に立って日本のBIMを推し進めてきたが、原点回帰でそろそろ本丸の発注者(施主/オーナー)にその任を担っていただくステージに入ってきた。次の10年/15年で、良いことも悪いこともその影響を受けるのは確実に発注者側となる。
恐らくこうした考え方は、理想論であって現実には難しい、外様が何を言っているとの感想を持たれるだろう。それでも「そもそもBIMって何だったっけ?」と一歩引いて見ることができれば、ここに活路を求めるのは自然の流れであり、避けて通れない道だ。発注者発のトランスフォーメーションを実現すべく、私たちもその活動に舵を切っていく所存だが、具体的な方策や救世主たる発注者が担うべき役割、そしてそれをどのようにしたら進めていけるのかなどの考察や提言は次稿以降で議論していきたい。
著者Profile
山崎 芳治/Yoshiharu Yamasaki
野原グループCDO(Chief Digitalization Officer/最高デジタル責任者)。20年超に及ぶ製造業その他の業界でのデジタル技術活用と事業転換の知見を生かし、現職では社内業務プロセスの抜本的改革、建設プロセス全体の生産性向上を目指すBIMサービス「BuildApp(ビルドアップ:BIM設計―製造―施工支援プラットフォーム)」を中心とした建設DX推進事業を統括する。
コーポレートミッション「建設業界のアップデート」の実現に向け、業界関係者をつなぐハブ機能を担いサプライチェーン変革に挑む。
著者Profile
守屋 正規/Masanori Moriya
「建設デジタル、マジで、やる。」を掲げるM&F tecnica代表取締役。建築総合アウトソーシング事業(設計図、施工図、仮設図、人材派遣、各種申請など)を展開し、RevitによるBIMプレジェクトは280件を超える。2023年6月には、ISO 19650に基づく「BIM BSI Kitemark」認証を取得した。
中堅ゼネコンで主に都内で現場監督を務めた経験から、施工図製作に精通し(22年超、現在も継続中)、BIM関連講師として数々の施工BIMセミナーにも登壇(大塚商会×Autodesk主催など)。また、北海道大学大学院ではBIM教育にも携わる。
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