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BIMが一過性のブームで終わらないために 空虚化する“フロントローディング”の根本原因 【現場BIM第8回】建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(8)(2/3 ページ)

2009年の“BIM元年”から15年が経過し、BIMは確実に浸透してきているが、各社で「BIM疲れ」が出てはいないだろうか。そこで今回は、日本のBIMの現在地を「BIM活用の本当の受益者は誰か」という基本的な問いから再確認してみたい。

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カギを握るのは発注者(施主/オーナー)

 上記各項目は単独のものではなく、それぞれに関連し合っているため根を断つ対策が必要であり、それをもって次のステージに業界として進んでいきたい。このような中にあって必要となるのは、取り組みを続けていくためのモチベーション、栄養分だ。2025年度からはじまる「BIM建築申請」の試行は大きなきっかけや旗振り役にはなるが、残念ながらその肥料にはなり得ない。

 さて、ここで「BIM活用の本当の受益者は誰か?」という基本的な問いに戻りたい。また、「今後の人手不足の日本建設産業で誰が最大の被害者になるのか」という問いと同義となる。

 後者については、これまでの慣習が変わらなければ、ゼネコンが全ての責任を負いゼネコンが被害者になるとの答えも理屈的にはありえるが、発注者(施主/オーナー)の皆さんにあえて進言するとすれば、それは必ず幻想に終わるということ。日本では、一般的に発注者側は建築の専門知識を持っていないため、設計作業のやり直しや工事着工後の仕様変更をある意味無邪気に扱い、慣習的に許されてきた。

 そもそも日本建設産業(特に施工)の低生産性は、発注者の「決めない」「変更する」ことが最大の要因の1つと言っても過言ではなく、BIMの概念とも最も相性の悪い慣習だ。蛇足となるが、私たちは建設の最終工程となる内装工事とも深く関わりを持っているが、全てのしわ寄せがこの最終工程に集中し、常に突貫工事を求められ、内装工事業(メーカー/商社など全てのサプライチェーン)は本当に疲弊している。

 野原グループが2024年5月末に、首都圏の内装仕上げ工事業139人を対象に実施した調査では、内装仕上げ工事業の従事者139人のうち、「全体工期の見直しの動きを実際に感じている」と回答したのは36.0%にとどまり、「全体工期の適正化に連動して、内装工事の工期の見直しの動きを感じている」と回答したのは28.0%しかいなかった(内装工事業界はもっと声を上げなければ!)。

首都圏の内装仕上げ工事業で、「適正工期への見直しの動き実感せず」と6割が回答
首都圏の内装仕上げ工事業で、「適正工期への見直しの動き実感せず」と6割が回答 出典:野原グループ「首都圏の内装仕上げ工事業の実態調査」

「首都圏の内装仕上げ工事業の実態調査」より(調査主体:野原グループ、調査期間:2024年5月28日、6月2日、調査対象者:野原装栄会・神奈川野原装栄会の正会員(内装仕上げ工事企業)、回答数:139人)

 この結果は、建築工事が各種専門工事から成り立っていることに由来する工期管理の難しさを示唆している。特に、内装仕上げ工事などの工期終盤に当たる専門工事の工期適正化を実現するには、一定の時間を要するのではないかと推察できる。

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