積水ハウスのCVCファンド、建設テックなどスタートアップ3社に出資:産業動向
積水ハウスと積水ハウス イノコムは、2024年4月に設立したCVCファンドを通じて、建設業界のDX推進を支援するlog buildなど、スタートアップ3社に出資した。
積水ハウスと積水ハウス イノベーション&コミュニケーション(積水ハウス イノコム)は2024年7月31日、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンド「積水ハウス投資事業有限責任組合」の第1弾案件として、log build(ログビルド)、Atomis(アトミス)、RePlayce(リプレイス)の3社に出資したと発表した。
DXによる現場管理業務の生産性向上、人材育成などに着手
log buildは2020年2月に設立。施工現場における品質/安全/進捗管理をリモートで実現するサービスを提供するなど、建設業界のDX推進を支援している。アプリケーションの提供の他、建設DX推進に関するコンサルティングや標準図面の作成代行、品質/安全管理のチェックシートやマニュアルの提供、リモート現場管理代行など、幅広いサービスを展開する。積水ハウスは2024年2月から、一部を除く全国の施工現場で、log buildが提供するVR現場空間「Log Walk」を導入し、現場の可視化と業務効率化を進めている。今回の投資を通じて、施工現場での適正な品質/安全管理の実施と、現場監督による現場管理業務の生産性向上に貢献することを目指す。
Atomisは多孔性配位高分子(PCP/MOF)を基盤技術として用いたアプリケーション開発を手掛ける企業で、2015年2月に設立した。多孔性配位高分子は、ナノサイズの細孔を持つスポンジ状の構造で、特定の気体を効率的に吸着/放出する特性を生かし、大気中のCO2を変換/回収するカーボンリサイクル事業や水素やメタンなど多様なガスエネルギーのシェアリング事業へ適用が期待される。積水ハウスグループは今後、Atomisと連携し、多孔性配位高分子によるCO2排出削減や水素住宅での活用を検討する。
RePlayceは、NTTドコモの新規事業創出プログラムから2024年4月にスピンアウトし、キャリア探究教材の開発や社会人コーチ育成の他、放課後に学べる中高校生向けキャリア探究サービス「はたらく部」、通信制高校に通う学生をサポートする「HR高等学院」を運営している。積水ハウスでは、自分らしい発想やアイデアをもった感性豊かな子どもを育む「キッズファースト」の取り組みを推進している。今後はRePlayceと中高生向け教育プログラムを共同検討し、建設業界の魅力訴求、多様な人材の輩出につなげる。
既存事業のさらなる成長につながる、スタートアップ企業などが投資対象
CVCファンドは、積水ハウス イノコムを中心に推進する積水ハウスグループのオープンイノベーションのさらなる推進を目的に、2024年4月1日に設立した。投資対象は、積水ハウスグループの既存事業の成長につながると想定される、建設業や不動産業における顧客獲得、設計/生産/施工/アフターサービスなど業務改善のプロセスイノベーションを行う企業などで、積水ハウス イノコムの事業開発領域である「LX(Living、Lifestyle、Learning/Transformation)」のコンセプトに沿って選定する。
他社にない強みを持つ企業に投資することで、技術の確立や社会実装までの支援を強化し、ソーシャルインパクトを創出するのが狙いだ。積水ハウスは今後も、「住まいと暮らし」を基軸に、グループとの事業シナジーを創出できる企業への投資検討を進めていく。
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