AI搭載の“スーツケース”を大阪・関西万博で実証 屋内外対応の「万博特別モデル」:導入事例
視覚障がい者の歩行をサポートするAI搭載のスーツケースが、大阪・関西万博のロボット実証実験に採用された。段差の乗り越え機能や低位置の障害物を認識するセンサーなど、屋内外対応の改良を施し、万博特別モデルとして複数台を運用する。
アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エムの4社が正会員として活動する「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場内で、視覚障がい者向けナビゲーションロボット「AIスーツケース」の実証実験に取り組むことを2024年5月末に発表した。
万博会場では、日本科学未来館(以下、未来館)が中心となって開発を進める特別モデルのAIスーツケースを複数台同時に運用する。
屋内外共通利用型の万博特別モデル
AIスーツケースは、視覚に障がいがある人を目的地まで自動で誘導するスーツケース型ロボット。これまでに、コンソーシアムと未来館が相互に技術協力を行うことで、大型ショッピングモールや新千歳空港、東京都江東区青海の未来館、未来館から最寄り駅までの屋外空間などで、一般ユーザーによるナビゲーション技術の実証実験を行ってきた。
2024年4月からは未来館で毎日定常的に試験運用を行い、より多くの実証データを蓄積し、人混みでの誘導や障害物の回避などのナビゲーション技術のさらなる向上に取り組んでいる。
万博では、「未来社会ショーケース事業」の「スマートモビリティ万博」領域で、会場内で次世代のさまざまなロボットを実証する「ロボットエクスぺリエンス」の展開が計画されている。
今回、AIスーツケースが参加予定者の1者として採用された。そこで、段差の乗り越え機能を強化した新車輪機構、低位置の障害物も認識するセンサーを新たに追加するなどの改良を重ね、屋内外共通利用型の万博特別モデルを開発した。会場内では、複数のAIスーツケースを長期間にわたって同時に運用し、社会実装に向けた技術課題を洗い出す。具体的な運用期間やエリアなどは今後、2025年日本国際博覧会協会と調整を進めていく。
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