建機の操作感覚を遠隔からリアルタイムに体感、熊谷組と東京高専が共同開発:遠隔操作
熊谷組は、遠隔地の工事現場に配置された建機を、安全かつ低遅延に制御するシステムの構築を進めている。今回、東京高専と共同で、建機の傾きや振動、音や映像をVR体験システム「シンクロアスリート」複数台に同期接続し、建機の操作感覚をライブ配信することに成功した。
熊谷組は2024年6月7日、東京工業高等専門学校(東京高専)と共同で、遠隔操作用の建機の傾きや振動、音、映像を、VR体験システム「シンクロアスリート」複数台に同期接続し、建機の操作感覚をライブ配信することに成功したと発表した。今後はシンクロアスリートを使って、遠隔地の工事現場に配置された建機を安全かつ低遅延に制御するシステムの構築を進める。
災害復旧の現場や建設現場の安全性を高める技術として、無線通信システムを使って遠隔地にいるオペレーターが建機を操作する「無人化施工」が注目されている。東京高専が開発したシンクロアスリートは、 ヘッドマウントディスプレイに表示される360度映像と、3軸の自由度を持つモーションシミュレーターが連動する体感型のシステムだ。主にスポーツ観戦向けに活用されているという。
今回の取り組みでは、シンクロアスリートを使って建機の操作感覚を再現した。視界や音の情報、乗り上げ情報をリアルタイムに操作室側に反映することで、本物の建機に搭乗しているような感覚での無人化施工の実現を目指す。
熊谷組と東京高専は2024年2月下旬、茨城県つくば市にある熊谷組技術研究所の屋外実験ヤードに不整地運搬車を用意し、研究所の実験室に設置したシンクロアスリートと、80キロ以上離れた東京都八王子市にある東京高専のシンクロアスリートを同期させ、2台同時に建機の搭乗感覚を共有する実証実験を行った。
実験では、熊谷組のオペレーターが実験室のシンクロアスリートに搭乗しながら、不整地運搬車を遠隔操作した。車両に設置した360度カメラの4K映像とスマートフォンの加速度センサーの情報を、車載の無線LANアクセスポイントから、熊谷組の実験室にあるシンクロアスリートの制御PCに送信。操作中にリアルタイムで車両の動作をコックピットへ反映した。東京高専へはモバイルルーターを経由して、インターネット回線でライブ配信を行い、搭乗者はほぼリアルタイムに車両の動きを確認できた。3つの環境のタイムラグは0.5秒程度だったという。
今後は東京高専のシンクロアスリートからも遠隔操作できるようシステムをアップデートする計画だ。
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