解体工事データからみる“空き家”が地域に及ぼす外部経済への影響 長期空き家をどう防ぐか:空き家の外部不経済に関するセミナー(後編)(2/2 ページ)
空き家問題は、行政や地域住民にとって、防災や治安に関わるため、解決は急務だ。しかし、経済的な側面から空き家問題を分析すると、都心部と山間地域など、エリアごとに生じる不利益は大きく異なる。空き家問題に取り組む産学官の団体「全国空き家対策コンソーシアム」が主催したセミナー後半では、さらに深掘りするため、東京圏での空き家の経済的な影響を分析。これからの人口減時代に突入する中で、空き家問題の将来の見通しととるべき対策を展望する。
空き家問題の解決に向け、打ち出すべき施策は?
セミナーではこうした研究発表を基に、最後にクラッソーネ 代表取締役 CEO 川口哲平氏が登壇。市場価値があるレイヤー1の地域では長期空き家の影響が著しいが、今後の世帯数の減少でレイヤー2、3の地域は利用しづらい空き家が増えていくという見通しを示した。さらに、もしもレイヤー1で長期空き家が10万件増えてしまうと、地価下落で1.47兆円もの影響が出てしまう試算も提示した。
こうした状況の改善に向けた提言として、「空き家の長期化を防ぐこと」「地域ごとの影響の違いを踏まえ、補助制度の優先順位を考えること」の2点を挙げる。具体的には、一定数以上の住民が住んでいるレイヤー1のようなエリアへの支援を手厚くし、その範囲内にある管理不全空き家への補助金の増額や固定資産税の減免措置、自治体の空き家相談窓口の強化などが有効策となる。
今後は、今回の研究結果から、クラッソーネをはじめとした全国空き家コンソーシアムは、さらなる研究の深掘りをはじめ、空き家所有者への啓発、そしてコンソーシアムを中心に、産学官が連携して、空き家対策のワンストップサービスといった支援の拡充に取り組む。川口氏は「空き家で困る人々がいない日本を目指し、努力をしていきたい」と意気込みを語った。
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