手書きの文字入力が建設現場を変えた MetaMoJi創業者が現場DXにかける思いとは:建設業界の新3Kを支援するソリューション(4/4 ページ)
ジャストシステムの創業者で日本語ワープロソフト「一太郎」の開発者としても知られる浮川和宣氏と浮川初子氏は、2009年にMetaMoJiを設立して以降、現場業務のデジタル化を支援するアプリの開発に注力してきた。2015年にリリースした施工管理業務支援アプリ「eYACHO」は、その使いやすさが評価され、契約企業数550社、利用者は5万5000ユーザーまで拡大している。両氏に、現場DXにかける思いについて聞いた。
AIで建設現場の労災事例を類型化
――現場の安全対策支援に注力していると聞きました
浮川社長 2024年問題を受けて、建設業でも残業時間を削減しようとする動きが広がっていますが、作業時間が圧縮されることで安全面に問題が出ては困ります。
私は若い頃、船舶用の電気設備を設計する仕事をしていました。どんなに大きなタンカーでも、電気設備が故障して動かなくなれば、横波を受けて転覆する危険性が生じます。上司から「電気設備のトラブルは船員の命に関わる。船が安全に就航するために、100年持つ設備にするように」と教育を受けました。その教えは今でも胸に刻んでいます。eYACHOでは、使い手の良さはもちろんですが、安全性を重視しながら現場業務を効率化する機能を備えています。
建設現場の安全パトロールでは、スマートデバイスで撮影した画像をその場でeYACHOに張り付け、指摘事項をまとめた書類を現場で直接作成できます。また、朝礼の資料も各担当者がそれぞれ必要事項を入力すれば完成するため、従来1〜2時間かかっていた作業が10〜20分で終わるようになりました。作業の効率化による残業時間の削減に貢献しています。
浮川専務 5年ほど前からは本格的に、労働安全衛生総合研究所(安衛研)、大林組と共同で、建設現場の安全性をさらに向上させるための取り組みを開始しました。
安衛研の梅崎重夫氏が提唱する労働災害のIMTOC表現を使用し、蓄積されてきた安全管理データからMetaMoJiが安全リスク評価のAIモデルを構築しました。IMTOC表現とは、業種(I)、起因物(M)、事故の型(T)、作業その他の条件(O)、直接原因(C)の5つの要素で労働災害の事例を類型化し、表現する方法です。
実用性を確認するため、大林組の建設現場で評価を行った後、2023年7月にAIを活用して建設現場の労働災害を未然予防する「安全AIソリューション」をリリースしました。建設現場の状況に合わせた安全管理用のチェックリストをAIが動的に作成するシステムです。
浮川専務 安全対策は人命に関わる重要な問題です。MetaMoJiでは今後もこれを開発の重点に置き、安全な現場を支えるため、品質や施工管理の強化にもAIの活用を広げて行きたいと考えています。
浮川社長 MetaMoJiは生成AIなど最新のテクノロジーを活用して現場の最適化を目指していますが、一方で、建設現場のデータを持ち合わせているわけではありません。建設現場を熟知した建設会社と連携しながら、現場で役立つサービスを開発し、フィードバックを受けながら改善を重ね、より良いサービスを提供していくつもりです。
現場のリアルなデータを提供してもらうのはハードルが高く、大林組のように経営層の理解がなければ難しい面もあります。現場の安全や品質の向上が会社の利益に直結していることを、MetaMoJiとしても引き続き呼びかけ、建設現場の業務のDXに貢献していきます。
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