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大林組が見据えるデジタル戦略の現在と未来 BIM生産基盤による“生産DX”大手ゼネコンの建設DX戦略(2/3 ページ)

大林組は、収益の根幹となる「生産DX」、生産DXを下支えする「全社的DX」、全てのデジタル化とDXを担保する「情報セキュリティの強化」を骨子に、デジタル戦略を展開している。複数の変革とデジタル深化で、挑戦を続ける大林グループのデジタル戦略の現在と未来をセミナーレポートを通して紹介する。

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デジタイゼーションからデジタライゼーションへ進化したBIM活用

 大林組のBIM活用は、BIMモデルの自社基準となる「SBS(Smart BIM Standard)」に準じたワンモデルによる設計・施工・維持管理の一貫利用を基本方針としている。意匠・構造・設備を同一のBIMデータで扱う“ワンモデル”に対し、協力会社が作るモデルは“サテライトモデル”としてデータ連携し、運用時の柔軟性も確保している。

 大林組のBIMは2010年に開始したが、当時はデジタイゼーション(組織やプロセスの全体ではなく、部分的なデジタル化)が中心だった。その後、2018年にSBSを導入し、BIMを構造化データとして社内で統合管理し、同時にワンモデルのBIM体制に移行した。2019年には、鉄骨デジタル承認などを実装して、デジタライゼーション(デジタル技術でサービスや製品の付加価値を高めること)へ進化している。

 BIMデータを確実に制作して管理するため、2020年にはSBC(Smart BIM Connection)というSBSモデリングの管理ツールを開発。モデル部材のコーディングや建築BOM(Bill of Materials:部品表)のAPI、製造業で情報管理する手法の「PLM(Product Lifecycle Management:製造業でBOMを扱う情報基盤)」も活用し、構造化された見積書を作成する取り組みにも着手している。

 大林組のBIMは、こうした仕組みで、全てのプロジェクトを横串でも管理する。情報の格納は、全社的DXとしてデータレイク/データウェアハウスを構築し、2024年末をめどにBIMの生産基盤となる見通しだ。

BIM生産基盤。2024年末までに3D生産基盤への以降を目指している
BIM生産基盤。2024年末までに3D生産基盤への以降を目指している 提供:大林組

一気通貫の情報システム「BizXBase」で業務プロセス変革

 業務プロセスの改革(BPR)では、生産情報と経営情報を相互に関連付ける一気通貫情報システム「BizXBase(ビズエックスベース)」の活用で、受注前からアフターサービスまでの案件情報をクラウド上で一元管理できるようになり、業務領域を横断した情報活用が可能になる。

 BizXBaseの業務基盤上では、再構築された業務フローの実行によって、業務の成果や根拠、承認の証跡などを蓄積していく。こうしたデータは、ストックデータとして新たな案件を扱う際に再利用できる。BizXBaseでの工程を繰り返すことで、業務上のあいまいさや無駄が省かれ、業務の効率化につながる。岡野氏はBizXBaseについて、「業務効率の改善と組織知の最大化を目指した」と話す。

 大林組では、生産DXの基盤とBIMをみなしており、BIMが扱う生産情報とBizXBaseが扱う経営情報は、建築BOMを介して融合する。BOMは、BIMモデルから柱、梁、壁、建具などの部品の情報を抜き出して部品表としたもので、大林組が開発したSBC(Smart BIM Connection)を介して生成。なぜかといえば、SBS(Smart BIM Standard)に準拠し、BIMモデルのLOD(形状詳細度)を適切に管理するためだ。BOMでは、多段階で各種マスターが引き当てられ、見積もりや調達の部門では、マスターが処理されたBOMを利用して業務を遂行することになる。この他、建物の部材データ群であるBOMは、CO2の排出量や修繕費の算出などの用途でも活用できる。

多くの来場者が集ったMCデータプラスのセミナー会場
多くの来場者が集ったMCデータプラスのセミナー会場 筆者撮影

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