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BIM確認申請で欠かせない「オープンBIM」と「CDE」 オープンBIM時代の到来で“建築/都市DX”実現へArchi Future 2023(4/4 ページ)

2009年のBIM元年から15年――。国交省の3D都市モデルプロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」との連携に加え、2025年からスタートする「BIM確認申請」など、日本のBIM活用は新たなフェーズに突入している。今後、BIM活用が国内で進展するうえで、建設ライフサイクル全体でステークホルダーをつなぎ、コミュニケーションやコラボレーションを可能にする「オープンBIM」と共通データ環境(CDE)の重要度がますます高まるという。

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CDEには“クローズドCDE”と“オープンCDE”の2種類がある

 最後に登壇したグローバルBIMの林氏は、完成度の高いBIMモデル構築をテーマに、「オープンCDE」を活用したワークフローを紹介した。

グローバルBIM 事業本部 設備BIM事業部 マネジャー 林晃士氏
グローバルBIM 事業本部 設備BIM事業部 マネジャー 林晃士氏

 林氏は、現在の建設ワークフローでBIMがどのように活用されているかを紹介した。基本設計から実施設計までのワークフローで、工事に参加する会社間のデータ調整やモデルの更新業務に特に多くの時間が割かれていることに注目し、BIMモデル運用の課題が「調整業務の効率化にある」とした。課題解決には、CDEが大きな役割を果たすとの見解を示した。

 林氏は、CDEと呼ばれるアプリケーションには“クローズドCDE”と“オープンCDE”の2種類があり、使用シーンに合わせて適切なアプリケーションを選択することが大切とする。クローズドCDEは、社内関係者間でのデータ共有に使用するもので、セキュリティの高い社内データなどを扱う際に有効。一方オープンCDEは、プロジェクトの関係者全体でデータを共有するもので、IFC形式のモデルデータや多種多様なドキュメントデータ共有する場合に適している。

クローズドCDEとオープンCDEの比較
クローズドCDEとオープンCDEの比較

 完成度の高いBIMモデルを効率的に構築するには、オープンCDEが欠かせないとし、ノルウェーのオスロに拠点を置くCatendaが開発し、グローバルBIMが日本で販売するオープンCDEアプリケーション「Catenda Hub(カテンダハブ)」の機能や活用のメリットを紹介した。

 林氏がCatenda Hubの機能として取り上げたのは、「ダイレクトリンク」。アドインで各社のオーサリングソフトと直接つながれる機能だ。

 従来型の建設プロジェクトのデータワークフローは、共有データサーバを介してデータをやりとりしており、データの取りまとめやデータ形式の変換に手間が掛かった。Catenda Hubのダイレクトリンク機能を使えば、各社のモデル作成ソフトで作成したBIMモデルやICFデータ、BCF(BIM Collaboration Format)データを直接インポートまたはエクスポート可能で、作業人数やコストの大幅に削減につながる。膨大な回数を繰り返すデータ更新などの場面では、強力な武器になる。

従来の建設プロジェクトのデータフロー。データの扱いに膨大な人と時間を要していた
従来の建設プロジェクトのデータフロー。データの扱いに膨大な人と時間を要していた
Catenda Hubを活用した建設プロジェクトのデータフロー。Catenda Hubは、RevitやArchicad、構造計算用「Tekla Structures(テクラ ストラクチャ)」、品質管理の自動検図ソリューション「Solibri(ソリブリ)」などで作成したIFCやBCFのデータをそのままインポートできる。また、NYKシステムズと共同開発した設備BIMソフト「Rebro」とのダイレクトリンク機能も実装している
Catenda Hubを活用した建設プロジェクトのデータフロー。Catenda Hubは、RevitやArchicad、構造計算用「Tekla Structures(テクラ ストラクチャ)」、品質管理の自動検図ソリューション「Solibri(ソリブリ)」などで作成したIFCやBCFのデータをそのままインポートできる。また、NYKシステムズと共同開発した設備BIMソフト「Rebro」とのダイレクトリンク機能も実装している
実プロジェクトでCatenda Hubを使用した総合調整会議のデータフロー。各社が作成したデータをCatenda Hubに格納し、統合モデルを表示。全体会議前に各担当者が問題のシーンや調整すべき事項を洗い出して全体会議で共有した。会議で話し合われた内容をもとにモデルを修正し、再度Catenda Hubに格納するまでのプロセスを何度も繰り返した
実プロジェクトでCatenda Hubを使用した総合調整会議のデータフロー。各社が作成したデータをCatenda Hubに格納し、統合モデルを表示。全体会議前に各担当者が問題のシーンや調整すべき事項を洗い出して全体会議で共有した。会議で話し合われた内容をもとにモデルを修正し、再度Catenda Hubに格納するまでのプロセスを何度も繰り返した

 他にもCatenda Hubには、APIをオープンにしており、他社ソフトとの連携と開発がスムーズで、発注者も含めてCDE環境を閲覧できるため、関係者が多い現場でも質疑や回覧を効果的に進められる。多くのCDEソフトが採用する従量課金制ではないため、ランニングコストを抑えられるなどのメリットがある。

 仮に設計初期段階からCatenda Hubを導入すれば、着工前に完成度の高いモデルを作って、仮想の竣工検査も可能になる。さらにCatenda Hub内にアーカイブされる工期中に作成したIFCデータを活用すれば、建物完成後のIoT連携などでも効果を発揮する。

仮想竣工検査の例。着工前に設計の考え方や着工後に行う工事検討などを発注者と共有できるため、着工後の追加の検討事項がかなり減り、建築設備の詳細納まりの検討や施工計画に多くの時間を割けるようになる
仮想竣工検査の例。着工前に設計の考え方や着工後に行う工事検討などを発注者と共有できるため、着工後の追加の検討事項がかなり減り、建築設備の詳細納まりの検討や施工計画に多くの時間を割けるようになる

 講演をまとめるにあたって林氏は、「調整業務の効率化はBIMデータ活用のスタートラインで、将来はファシリティマネジメント(FM)や都市DX、ロボットのマッピングといったIoTデータとの連携でBIMモデルの活用は進むだろう」と述べた。その際に重要なのは、「今ストックしたデータを2030年にも活用できる」という恒久性であり、それを実現するのがIFCだと強調した。

 そして、各社のオーサリングソフトとダイレクトにリンクするオープンCDEを使ってIFCでデータを運用することが、実務に即した一意性のあるワンモデルBIMとなる。そのためのツールとして、Catenda Hubの活用も検討してほしいと提案した。

 林氏は「BIMデータの価値は、設計・施工領域だけにはとどまらない。その価値を適切に引き出すためには、精度の高いモデルを設計の早い段階で構築することが重要だ。2009年のBIM元年に始まる日本のBIMは、これからはBIMを活用する時代を迎える。新しい時代に立ち向かうためにオープンCDEの活用に真剣に取り組む必要がある」との持論を述べ、壇上を後にした。

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