「AI×建築設計」新時代の幕開け ChatGPTとBIMの連結で未曽有の設計プロセス革新:Archi Future 2023(1/4 ページ)
2023年はAIへの注目が社会全体で集まり、特にChatGPTをはじめとする自然言語処理は、AIを身近なものにした。自然言語処理は、人が日常生活で使う言葉をAIが処理する技術で、話し言葉でAIに指示できる。フローワークス 代表 横関浩氏は、AIで設計者の業務がどのように変わるかを探求し、建築写真をもとにChatGPTで自動3Dモデリングなどを試みている。
Vectorworksで設計BIMの環境を提供するフローワークスの代表取締役 兼 CEO 横関浩氏は、「Archi Future 2023」(会期:2023年10月26日、東京・有明TFTホール)で「AIと建築設計〜新時代の幕開け―底上げされる能力、拡大する創造性、変貌する設計者―」と題し、建築設計でのAI活用の現状と、対話型の生成系AIを設計に採り入れる新たな試みを紹介した。
10年先と思っていたAIの普及が、すぐ直前に迫ってきた
このところ、あらゆる産業でAIの利用が進み社会の注目を集めている。そのきっかけとなったのが「ChatGPT」の登場だ。ChatGPTは、2022年11月にOpenAIがリリースしたAIを用いたチャットサービス。いまや誰もが知るとことだが、ChatGPTは、人と会話するような言語でAIに問いかけ、回答が得られる。
横関氏は、冒頭でChatGPTのような自然言語処理の急激な進歩が、AI普及に大きな影響を与えているとした。
AIに限らず、今までになかった製品やサービスが社会に普及するには、新しいコト/モノに対する感度が消費者層に受け入れられなくてはならないる。ここで言及する消費者層とは、「イノベーター理論」で市場を購買時期に応じて5つの層に分割した分類で、新しいコト/モノに敏感な順に、情報感度と好奇心が高く最初期に採用する「イノベーター(革新者)」、インフルエンサーも含むイノベーターの次に採用する「アーリーアダプター(初期採用者)」、メインストリームの中で初期に採用する「アーリーマジョリティー(前期追従者)」、新しい製品やサービスに対して消極的な「レイトマジョリティー(後期追従者)」、最も遅く採用する「ラガード(遅延者)」に分けられる。
米経営コンサルタントのジェフリー・ムーア氏の「キャズム理論(Crossing the chasm)」によれば、アーリーアダプター(初期採用者)とアーリーマジョリティー(前期追従者)の間には、「キャズム」という溝が存在し、社会に広く浸透するには市場の大多数を占めるアーリーマジョリティー以降に訴求する必要があり、そのためにはキャズムを乗り越えなければならない。事実、ChatGPTはキャズムを乗り越えている。
横関氏は、建築でAIを使う社会が来るのは「まだ10年先だと予想していたが、思ったより早く進んでいる」と実感を漏らす。
横関氏は、キャズムの右にいるアーリーマジョリティー以降を「実際に使って効果がある、もしくは簡単に使えること」を重視する人と位置付ける。建築設計では、多くの設計者が「簡単に使いたい、実務で効果を出したい」という人たちだと話す。
設計業務で、AIをどう使うか?
自然言語処理や画像生成のAIが普及すると、建築設計のプロセスをAIによって強化できる。なぜなら、建築設計で人間が行う「認識」「アイデア創造」「設計」のプロセスにAIが対応するからだ。
横関氏は、人間の認識プロセスとAIの情報処理プロセスを示し、そのステップや流れが基本的に同じであると説明した。一般的に、人が何かを認識するプロセスは目や耳から入った情報を取捨選択し、その後、得た情報に加工や変形を施す工程をたどる。そのステップは、AIが情報を処理するプロセスと基本的には変わらない。
もちろん、人間の認識プロセスと現時点でのAIの情報処理プロセスには違いもある。AIは自ら情報を取りに行かないので、必要な情報を人が与えなければならない。フィルターでどのような取捨選択して、エフェクターでどのような処理するかは人間が指示する必要がある。
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