工場の環境負荷低減や働きやすさを評価するシステムを明治工場に初導入、日建設計:サステナビリティ
日建設計と日建設計総合研究所は、工場建物の環境負荷低減や働きやすさ、品質確保などに関する取り組みを評価するサステナビリティ評価システムを開発した。明治の工場施設に導入している。
日建設計と日建設計総合研究所は、工場建物の環境負荷低減や働きやすさ、品質確保などに関する取り組みを評価するサステナビリティ評価システムを開発したと2023年12月に発表した。
環境負荷低減や働きやすさに関する企業の取り組みを評価
評価システムでは、対象企業の施設管理に対する考え方を取り込むことで、各企業に沿った評価指標の策定が可能になる。既存の工場施設を客観的に評価することで、新たな施設整備時に達成すべきコンセプトの明確化や設計から維持管理までの建設プロセスでマネジメントの容易化が期待できる。
食品メーカーなどの製造事業者は、事業活動のあらゆる段階で省エネルギーに努めており、特に生産現場でのCO2排出量が少ない燃料への転換や高効率設備の継続的な導入を進めている。また、健康経営推進のために、従業員の健康に配慮した工場の室内環境整備など環境品質を高める取り組みも行っている。
しかし、それらの既存施設の情報を総合的に評価し、共有する方法が無く、新たな施設整備の度に条件整理と建物の仕様決定に多くの時間を要していた。既に運用されている総合環境性能評価指標として、CASBEEやLEEDがあるが、オフィス部分を対象としているため、工場施設を適切に評価することは困難だった。
そうしたニーズに応える形で開発したサステナビリティ評価システムは、明治の工場施設に初導入した。工場管理に関する知見を反映した環境性能評価ツールとして、運用している。
明治は、「品質確保上衛生的な工場」「働きやすい工場」「安全安心な工場」「柔軟性の高い工場」「環境リスクに強い工場」「地域貢献する工場」「地球環境と調和する工場」「イノベーションにあふれた工場」の8項目を設定。AHP法(階層分析法)を用いて重み付けし、取り組み状況に応じた評価点を付与した。評価点の合計点数(100点満点)により、ダイヤの数による5段階の格付けを付与する仕組みを採用している。
日建設計と日建設計総合研究所は今後、新工場建設の設計でサステナビリティ評価システムを活用していく。基本設計時や実施設計時、竣工時といった各設計段階で評価し、建物コンセプトの確認や過剰設計、または過少設計を抑制する。
さらに、社会ニーズの変化にすぐに対応できるフレキシブルな工場、維持管理や省人化が容易な工場、SDGsなどに寄与する工場など、施設価値を客観的に把握し、達成すべきコンセプトを関係者間で共有する。また、既存工場への適用方法や建設コストを反映した投資評価の手法の検討も進める。
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