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インタビュー

日建設計が構想する“レジリエント・シティー” IoTとVRで巨大地震の減災へ【設計者インタビュー】関東大震災から100年に考えるBCP対策(1/4 ページ)

関東大震災から100年の節目を迎えた今、南海トラフや首都直下など発生が近づいていると予測されている。そうした防災/減災が求められる社会変化に従い、日建設計は設計提案でBCP対策のプラスαとなる2つの防災ソリューションを展開している。双方の開発責任者に、開発意図や活用事例について聞いた。

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 人々の生活や社会の安心・安全を守る、建物の設計・監理、都市デザインを手掛ける日建設計。東日本大震災やコロナ禍での経験をもとに開発し、関東大震災から100年を経過した今、都市のレジリエンス(強靭化)に寄与するIoTとVRを用いた2つの防災ソリューションがあるという。東京・飯田橋の日建設計 東京本社で、それぞれの責任者に開発意図や活用事例についてインタビューした。

ソニックシティビルやミッドランドスクエアにも導入されている「NSmos」

日建設計 東京本社でのインタビュー
日建設計 東京本社でのインタビュー 撮影:石原忍

 その1つは、地震時の揺れや損傷状況を常時計測して判定する構造ヘルスモニタリングシステム「NSmos(Nikken Sekkei Structural Monitoring System:エヌエスモス)」だ。2011年3月11日に発生した東日本大震災の経験を機に開発に着手し、2014年3月にサービス提供を開始。これまでに、ソニックシティビル(埼玉県さいたま市)やミッドランドスクエア(愛知県名古屋市)、YKK80ビル(東京都千代田区)をはじめ、新築/既存の建物で70棟以上に導入されている(2023年9月時点)。

 システムそのものはシンプルで、建物の5〜7層に1カ所の割合で地震計(加速度センサー)を設置するだけで、地震発生時に建物の揺れをリアルタイムに計測する。取得データからは、建物の構造体と非構造部材(外装材、天井、設備、家具)の損傷状況を自動で分析し、地震後の2〜3分で建物の被害状況や避難の要否を判定した簡易レポートを防災センターなどに設置した専用PCに表示する。レポートはクラウドにもアップされるので、建物管理者だけでなく、事前登録している建物利用者も、手持ちのスマートフォンやPCで確認できる。

「NSmos」の地震計設置イメージ
「NSmos」の地震計設置イメージ 提供:日建設計

 日建設計 エンジニアリング部門 構造設計グループ アソシエイト 今枝裕貴氏は、「簡易レポートに表示される判定値は、無被害から大破までの5段階で示される。それぞれの判定は、建築構造に熟知した構造設計者が、個々の建物に合わせて事前に設定した変形や加速度の判定値と比較して行うため、簡易ながら確実で信頼性が高い」と送信されるレポート内容の質にNSmosの強みがあると強調する。

 兵庫県にある防災科学技術研究所の「実大3次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」での加震実験でも、NSmosの判定結果と被災状況が整合すると確認されている。

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