「AI×建築設計」新時代の幕開け ChatGPTとBIMの連結で未曽有の設計プロセス革新:Archi Future 2023(4/4 ページ)
2023年はAIへの注目が社会全体で集まり、特にChatGPTをはじめとする自然言語処理は、AIを身近なものにした。自然言語処理は、人が日常生活で使う言葉をAIが処理する技術で、話し言葉でAIに指示できる。フローワークス 代表 横関浩氏は、AIで設計者の業務がどのように変わるかを探求し、建築写真をもとにChatGPTで自動3Dモデリングなどを試みている。
AIによる建築設計の底上げには、BIMが不可欠
建築設計でAIを活用するには、AIが建築を理解しなければ始まらない。そのときに必要になのがBIMだ。人間とAIが自然言語でコミュニケーションするように、AIとBIMがデジタル上でコミュニケーションして連携すれば、これまでになかった革新が実現する可能性がある。
横関氏は、AIとBIMが連結することで、建築家はより自由で挑戦的な設計が可能になるとする。また、設計者個人が行うよりも、設計の質が上がり、設計ミスもなくなる。
横関氏は創造性の面で、AIによる物量とスピードが創造性を後押しして、組み合わせを変えることでアイデアが無限に生成されるメリットにも触れた。
もちろん、現在のAIが生成したアイデアには、ありきたりのものも多い。だが、数こそ少ないがレベルの高いものも混じっている。何を組み合わせてAIに与えるか、またAIが生成したものの中から何を選ぶかは、現時点では設計者の領域だ。その意味で横関氏は、組み合わせの妙や既存のアイデアや建築物から何を選ぶか、人間側の感性が重要になるとする。
横関氏は、これまでの設計手法にAIとBIMの連携が加わることで、より手軽で自動化したジェネレーティブデザインのような設計デザインの自動生成など、設計そのものの在り方が大きく変貌すると予測する。さらに、AIによって設計者は煩雑な作業から開放される一方で、曖昧なアプトプットもできなくなる。つまり、高いクオリティーも求められるようになることも、押さえておかなければならない。
AIが自然言語に対応し、画像や映像を生成するようになったのは、ごく最近のこと。ここまで来れば、BIMと連携し、設計の世界を革新するのに、さして時間はかからないように思える。今後、AIがどのように建築設計を変えるのか、横関氏の講演はその大きなヒントになるものだった。
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