東京大学と民間9社が“スマートビルシステム”確立へ 建築設備のエミュレーションでGXを実現:BAS
東京大学と民間企業9社がスマートビルを実現するための各種建築設備が連携するシステム構築と、運用するための高度人材の育成に乗り出した。2028年3月までの4年5カ月間に開講する専門講座で、建築設備にデジタル技術を駆使し、スマートビルシステムの社会実装とともに、GXの実現を目指す。
東京大学大学院 工学系研究科、関電工、九電工、新菱冷熱工業、大気社、ダイダン、高砂熱学工業、東京電力ホールディングス、東洋熱工業、三菱重工サーマルシステムズは、2023年11月1日に「スマートビルシステム社会連携講座(Smart Building SystemResearch Initiative)」を共同で開設した。
講座では、カーボンニュートラルを含む「グリーントランスフォーメーション(GX)」の実現に建築設備の分野から貢献するべく、スマートビルシステムに関する共同研究を推進し、GXを加速させる。同時に、スマートビルシステムの学問分野での開拓や人材育成にも着手し、建築設備分野のエンジニアリング力の拡張と深化を図っていく。
室内環境と設備稼働状況をエミュレーションでGX実現へ
建築物の運用段階の年間エネルギー消費量は、社会全体の3〜4割を占め、業務用建築物でのエネルギー消費量の大半は空調などの設備に起因している。そのため、設備を制御するビルオートメーションシステム(BAS)は、その運用改善(スマート化)することは、GXという社会課題の解決に対し、重要な役割を担っている。運用改善には、室内環境や機器運転状態の高解像度なセンシングで時々刻々の実態を把握しながら、その実態と極めて詳細な“エミュレーション(デジタルツインのサイバーシステム)”を共進させ、人中心の快適環境、CO2排出やコストの削減、行動変容などの新たなサービス提供や価値創出につなげていくことが欠かせない。
しかし、従来のBASは一品生産や詳細なエミュレーションの不足といった理由で、新たな価値創出に向けた検討が十分ではなかった。
今回、開講する講座では、スマートビルシステムの新たな学術の確立と発展、スマートビルシステムを構築し、運用するための高度人材の継続的な育成と輩出を支える拠点の形成に努める。また、エミュレーションを用い、さまざまなサービスやアルゴリズムの開発やAI用学習データを作成し、ビルのスマート化を加速させるとともに、多様なニーズに応えるスマートビルシステムの価値向上と新たな市場開拓にも取り組んでいく。
講座概要
講座名:スマートビルシステム社会連携講座(Smart Building System Research Initiative)
設置期間:2023 年 11 月 1 日〜2028 年 3 月 31 日(4 年 5 ヶ月)
代表教員:赤司 泰義(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授)
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