アメックス副社長が建設業界を独自分析(前編)―「2024年問題」解決のヒントは「企業間決済」にアリ:建設業のバックオフィスから考える2024年問題(3/3 ページ)
本連載では、アメックスの建設業界を対象にした調査結果をもとに、業界が直面している人材不足や労働人口の高齢化など「ひと」に関する課題や経理業務での支払い業務の煩雑さや属人的な作業を、どう改善していくべきか、前後編の2回にわたり、解説します。
建設・建築業界における決済の現状とは?
キャッシュレス化が進んでいることから、小口決済に関しては法人向けクレジットカード決済の利用も拡がっています。しかし、建設・建築業界は歴史のある業界ということもあり、取引先への請求や支払いの慣習としていまだに、銀行振込、現金、手形・小切を利用するケースが多く見られます。今回の調査結果でも、決済方法を選ぶ理由として「いつもこの方法だから」「取引先に求められるから」が最も多く挙げられました。
近年ではクレジットカード決済の利用も増えてきてはいるものの、取引先への請求でクレジットカード決済を利用している企業は14.9%にとどまっています。一方、支払については30.7%の企業がクレジットカード決済を利用していると回答しています。
つまり、支払いにはクレジットカードを利用したいと考えているが、請求についてはこれまでの慣習をそのまま継続している企業が多いことがうかがえます。言い換えれば、銀行振込をはじめとする既存の決済方法よりも、クレジットカード決済の方が便利だと認識されていることにもなります。
クレジットカードの支払いを受け付けている当社の加盟店でも、「クレジットカードで購入したい」という顧客の声を受け、加盟店契約に至ったケースがあります。少額の決済だけでなく、建設・建築業界で大きな出費となる、建設機械の購入にも利用いただいており、クレジットカードの支払いを受け付けることで、既存顧客との取引拡大や新規顧客の獲得につながっているそうです。
前編のまとめ
少子高齢化による労働人口の減少により、日本企業のとりわけ建設・建築業界は人材不足に苦しんでいます。建設会社の経理業務も例外ではなく、専任の担当者を雇用することが難しいなか、既存の経理業務を踏襲している状況では業界平均で月に100時間を超える長時間業務が存在し、人手は足りていないにもかかわらず、業務だけは山積みになっている実態が分かります。
クレジットカード決済の導入は、既存の請求業務や支払い業務を効率化することが可能です。小口決済に関してはキャッシュレス化も進んでおり、法人向けのクレジットカードによる決済も利用されるようになっていますが、取引先との請求や支払いは、これまでの慣習によって導入はあまり進んでいません。
しかし、支払にクレジットカード決済を利用したいと考える企業は着実に増えており、今後クレジットカード決済を受け入れることで、新規顧客の開拓につながる可能性もあるといえるのではないでしょうか。
<「建設・建築業界における企業間決済調査」概要>
調査時期:2023年4月21〜24日
調査対象:建設・建築業界の経営層や支払い、請求などの経理・決済業務に従事している20〜70代の男女309人
調査手法:オンライン
著者Profile
谷川 美紀 /Miki Tanigawa
アメリカン・エキスプレス カード事業部門 セールス&マーケティング 副社長。2002年にアメリカン・エキスプレス入社。個人事業部門にて新規カード営業、2007年に営業部マーケティングのマネージャー、2013年にディレクター、2014年に法人事業部へ異動。SME(中小企業)セールスのディレクターとして、法人会員の拡大および中小企業顧客に対するソリューションの提供、B2B決済の拡大に尽力。2019年、同部門の副社長に就任。2021年、個人カード事業部の営業チームを統合し、個人・法人両方にソリューションを提供するOne Salesを立ち上げ、現在に至る。
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