木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODII」が柱や梁の1〜2時間の耐火大臣認定を取得、熊谷組:施工
熊谷組が開発した木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODII」が、柱や梁の1〜2時間の耐火大臣認定を取得した。環境配慮型λ-WOODIIは、現在施工中の地上13階建てオフィスビルの柱と梁に適用する。
熊谷組は2023年3月7日、木材と被覆材の分別廃棄を可能とした木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODII」について、柱や梁(はり)の1〜2時間の耐火大臣認定を取得したと発表した。
木材と被覆材の分別廃棄で
環境配慮型λ-WOODIIは、熊谷組で開発した「断熱耐火λ-WOOD」の施工手間や現場管理を低減させるとともに、施工面やコスト面の課題を改善した環境配慮性を付与した木質耐火部材。従来のλ-WOODの特長となっている薄い耐火被覆層と表面仕上げ材の選択自由度の高さを踏襲しつつ、施工性の向上とコストダウンを実現した。さらに、数十年後の将来を見据え、木材と被覆材の分別廃棄やリサイクルを可能にする環境に優しい仕様とした。
新たに大臣認定を取得した環境配慮型λ-WOODIIは、現在施工中の地上13階建てオフィスビルの柱と梁に適用する予定だ。
荷重支持部である木材が隙間なく耐火被覆材で覆われている構造の木質耐火部材、メンブレン型木質耐火部材は、一般に木材の周囲をせっこうボードなどの耐火被覆層で覆われている。旧来の断熱耐火λ-WOODでは、せっこうボードの留付に接着剤を使用し、せっこうボードの分別廃棄が困難だった。
環境配慮型λ-WOODIIでは、せっこうボードの留付に、長い留付材を使用することで留付材のみで固定し、接着剤を使わずに済み、木材とせっこうボードの解体分離を可能とした。これにより、建築物の改修や解体時に発生した産業廃棄物の削減に加え、せっこうボードのリサイクルに貢献。また、断熱耐火λ-WOODで施工時の現場からのフィードバックを収集することで、技術的な改良を加え、現場の労務低減や工期短縮を実現している。
これまで断熱耐火λ-WOODでは、被覆材として厚みが異なる2種類の普通硬質せっこうボードと断熱耐火パネルを使用しており、現場管理の手間が課題となっていた。λ-WOODIIは被覆材を21ミリの強化せっこうボードに統一し、現場管理の手間を低減。またボード1枚当たりの厚みを厚くすることで積層枚数を約半分に減らし、工期短縮を実現した。
なお、従来の断熱耐火λ-WOODの柱-梁の取り合い部は、交互張りを基本としていたが、λ-WOODIIの性能確認試験で、耐火性能に問題がないことを確認。柱先行から梁後追いでの施工が可能となったことにより、耐火被覆の施工のスピードが上がり、工期短縮も期待できる。
今後は、物件適用や事業化を目指し、その他の部位・要求耐火時間も大臣認定取得を進める予定としており、梁貫通孔や異種構造との取り合い部など、中大規模木造建築の実現に向け、必要とされる技術も開発を進めて行く考えだ。
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