戸田建設、DSIニッシン、旭化成アドバンス、虎乃門建設機械、エピロックジャパンの5社は2023年4月10日、ケミカルレジンカプセル定着材とセミオートロックボルト自動打設機を使用したSFレジンボルト工法により、完全ワンオペレーターで施工可能なロックボルト自動施工システムを開発したと発表した。
危険なロックボルト施工の安全性と作業環境を大幅に向上
山岳トンネル工事でのロックボルト作業は、ロックボルト孔の削孔や定着材の充填(じゅうてん)、ボルト挿入に分けられ、削孔作業を除き、人力作業が一般的。一連の作業は切羽直近で行われるため、切羽から掘削された表面の土砂や岩が崩れ落ちる肌落ちや高所作業時の墜落、支保工との挟まれなどにより被災するリスクが高く、機械化施工による省人化や無人化が求められている。
新たに開発したロックボルト自動施工システムの現場適用では、切羽に近づかず、また施工時の高所作業も必要なく、従来の苦渋で危険なロックボルト施工の安全性と作業環境を大幅に向上することに成功した。さらに安定した品質と同時にモルタルでは、1日以上かかる設計強度発現を分単位の短時間で発現するロックボルト施工を実現した。
特徴としては、カプセル定着材の硬化時間を15秒から4分、カプセル径や長さも各種選択可能で、さまざまな施工条件に対応する。任意の硬化時間製品も作成できるため、特殊な施工条件下でも最適なサイズと硬化時間を選定し、ロックボルト以外のボルトやアンカー材への応用も可能だという。
施工時に問題となる天場付近の定着材保持では、ケミカルレジンカプセルはエアーにより射出されるため、上向き孔でもカプセル落下のない安定した定着材のセットと保持が可能となっている。
セミオートロックボルト自動打設機では、削孔位置やロックボルト孔削孔、ケミカルレジンカートリッジの孔内へのセット、ロックボルト挿入、ロックボルト挿入後の定着材攪拌混合、硬化までのロックボルト保持までを全て自動化。安全性や生産性の向上だけではなく、機械的に定着材を攪拌混合することで、ケミカルレジン使用時の課題だった安定した品質のロックボルト施工を実現した。
環境面でも、従来のモルタル使用に比べ、セメント粉じんやミキサー内や注入ホース内の残モルタルが発生せず、産業廃棄物であるセメント残袋も生じない。また、作業環境も冷暖房付の遮音性フルキャビン内で行うので、快適な作業環境を整えられる。
SFレジンボルト工法のケミカルレジンカートリッジは、国内で製造した場合に比べて10分の1以下のコストを達成しているが、作業人員低減による生産性の向上、モルタルポンプの維持費や残材の産廃処理縮減により、材料費以外のコスト縮減が見込め、モルタル定着材と比較しても現実的な価格差となっている。
今後は、既存の汎用ジャンボに後付可能なSFレジンボルト工法の施工装置を提供し、汎用性を高めていく。後付装置は、ケミカルレジンカプセル射出やボルト挿入、ケミカルレジン攪拌混合、硬化時ロックボルト保持など、一連の機能を含んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 山岳トンネル工事:鹿島が“吹付けコンクリートの自動化”を初めて実トンネルに適用 ±20mmの高精度で平滑に施工
鹿島建設は、山岳トンネル工事で吹付けコンクリートの自動化を初めて、岐阜県飛騨市で進めるトンネル工事に適用した。 - 山岳トンネル工事:40%の省人化を実現するロックボルト遠隔打設専用機を開発、大林組
大林組は、ロックボルト打設作業を遠隔操作で行えるロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス」を開発した。今後は、ロボルタスの実証実験を積み重ね、その他のトンネル工事施工技術と連携し、トンネル工事全体の生産性向上と省人化を実現することで、社会インフラの安全かつ迅速な整備に貢献する。 - 維持管理:作業時間が半減、ロックボルトの間隔を計測する「デプスカメラ」のシステムを三井住友建設と日立ソリューションズが開発
三井住友建設と日立ソリューションズは、「デプスカメラ」を活用して、トンネルや切土補強土のプレートを締め付けるロックボルトの配置間隔を計測するシステムを共同開発した。 - 山岳トンネル工事:ドリルジャンボの施工動作を西松建設が無人化
西松建設は、山岳トンネル施工重機の遠隔操作技術・自動化技術を組み合わせた山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS」の要素技術として、ドリルジャンボの施工動作を無人化する「Tunnel RemOS-Jumbo」を開発した。Tunnel RemOSに関しては、2023年度までに各技術の実証試験を完了し、2027年度までの実用化を目指している。 - 山岳トンネル工事:遠隔施工システムで山岳トンネル工事のロックボルト打設を完全機械化、清水建設
清水建設は、古河ロックドリルとともに、ロックボルトの遠隔打設装置(ボルティングユニット)を2基装備した「2ブームロックボルト打設専用機」による遠隔施工システムを構築し、富山県の「東海北陸自動車道真木トンネル工事」に実証導入した。今回の現場での実証施工では、穿孔やモルタル充填、ロックボルト挿入に至る一連の打設作業を完全機械化することに成功し、災害リスクの高い切羽直下での人力作業を不要にするとともに、サイクルタイムの短縮や施工の省人化にも効果があることを確かめた。 - 山岳トンネル工事:鋼製支保工を遠隔で建て込みする新装置を開発、建込み作業をオペレーター2人で実現
大林組は、山岳トンネル建設の生産性を向上させる統合システム「OTISM(Obayashi Tunnel Integrated System)」の開発に取り組んでいる。OTISMで、トンネル掘削の安全性上昇と省人化に関するシステム「OTISM/TUNNELING(オーティズム/トンネリング)」の構成技術として、鋼製支保工を遠隔で建て込みする「クイックテレクター」を開発した。クイックテレクターは、利用することで、従来は4〜5人で行っていた作業を2人まで省人化する。