遠隔施工システムで山岳トンネル工事のロックボルト打設を完全機械化、清水建設:山岳トンネル工事
清水建設は、古河ロックドリルとともに、ロックボルトの遠隔打設装置(ボルティングユニット)を2基装備した「2ブームロックボルト打設専用機」による遠隔施工システムを構築し、富山県の「東海北陸自動車道真木トンネル工事」に実証導入した。今回の現場での実証施工では、穿孔やモルタル充填、ロックボルト挿入に至る一連の打設作業を完全機械化することに成功し、災害リスクの高い切羽直下での人力作業を不要にするとともに、サイクルタイムの短縮や施工の省人化にも効果があることを確かめた。
清水建設は、山岳トンネル工事の安全性と生産性の向上を目的に、古河ロックドリルとともに、ロックボルトの遠隔打設装置(ボルティングユニット)を2基装備した「2ブームロックボルト打設専用機」による遠隔施工システムを構築し、富山県の「東海北陸自動車道真木トンネル工事」に実証導入したことを2022年6月24日に発表した。
1サイクル当たり13本のロックボルト打設が35分で完了
山岳トンネル工事では、掘削後における地山の崩落と変形を防ぐための支保工として、ロックボルトと呼ばれる鋼棒を切羽(きりは)周辺の地山に放射状に打設する。ロックボルトの打設では、穿孔、モルタル充填、ロックボルト挿入の繰り返し作業で、穿孔以外の業務は人力に依存している。
一方、切羽直下で重量物を扱う作業の負担を軽減し、施工の安全性を確保するには、モルタル充填とロックボルト挿入を含む全打設プロセスの機械化が求められている。
そこで、清水建設は、ロックボルトの遠隔打設装置(ボルティングユニット)を2基装備した2ブームロックボルト打設専用機を用いた遠隔施工システムを構築した。
2ブームロックボルト打設専用機に装備するボルティングユニットは、穿孔用装置、モルタル充填用装置、ロックボルト格納用マガジン、ロックボルト押込み用装置を一体化した遠隔打設装置。
遠隔施工システムでは、オペレーターがボルティングユニットを装着した2つのブームをキャビン内から遠隔操作することで、切羽直下での人力作業を削減し、ロックボルト打設の完全機械化を実現する。
打設作業に際しては、事前に両ブームの動作パターンを3Dシミュレーションで検証し、1サイクルの打設効率を最大化する施工計画を導出する他、打設時には、キャビン内におけるコントロールパネル画面のナビゲーションに従い、ブームの移動、穿孔、モルタル充填、ロックボルト挿入といった一連の機器操作を順に進めていく。
加えて、作業中には、穿孔位置やロックボルトの挿入位置・角度、モルタル注入量などの施工データがパネル画面でリアルタイムに可視化され、計画値と照らし合わせながら作業を進められるため、出来形精度の向上や施工品質の均質化を図れる。
既に、清水建設では、富山県の「東海北陸自動車道真木トンネル工事」に遠隔施工システムを導入している。東海北陸自動車道真木トンネル工事での実証施工では、1サイクル当たり13本のロックボルト打設が35分で完了し、一般工法と比べてサイクルタイムを約10%短縮できることが分かった。また、作業人員についても、一般工法では5人を要していた作業を3人で施工することが可能。
今後は、運用現場での課題抽出と機能改善を通じて、2ブームロックボルト打設専用機による遠隔施工の実効性を高め、山岳トンネル工事の標準技術として広く展開していく。
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