“長谷工版BIM”とサッシメーカー4社が連携、情報化生産でサッシ製造のフローを短縮:BIM
長谷工コーポレーションは、サッシメーカー4社とともに、“長谷工版BIM”で、サッシ製作図の作成から図面承諾までを一気通貫で行える情報化生産のシステムを開発した。システム導入により、作図時間の短縮や長谷工とメーカーとのヒューマンエラーが防げる。
長谷工コーポレーションは2023年3月30日、三協立山、不二サッシ、LIXIL、YKK APのサッシメーカー4社の協力を得て、長谷工版BIMとメーカー各社の生産システムをデータ連携するマンション用「アルミ製サッシ生産システム」を構築したと公表した。
長谷工版BIMとは、長谷工独自のマンションに特化した3次元建物モデルで、意匠・構造・設備・外構などの図面を一元化したフルBIMモデルに加え、関連業務とのデータの受け渡しを行うためのさまざまなツールを備えている。2020年からは、マンション案件の設計は全てBIM化し、施工でもBIM活用の適用範囲を広げている。
BIMデータによる情報化生産で、フローの時間短縮とエラー防止
これまでアルミ製サッシの生産は、長谷工側からメーカー各社に設計図書(紙面または電子化情報)を提供し、メーカー各社は受け取った設計図書を設計作図システムに手入力しており、データ入力や製作図の承諾などで労力がかかっていた。2020年に設計領域で長谷工版BIMを100%導入できる体制が整ったことに伴い、長谷工版BIMを活用したメーカー各社とのデータ連携システムの開発を検討し、このたび共通で利用できるシステムを構築した。
アルミ製サッシ生産システムでは、長谷工版BIMに登録されたアルミ製サッシに関するデータを自動で抽出。メーカー各社の設計作図システムに取り込み、サッシメーカーによる製作図の作図から、図面承諾まで、長谷工とメーカー各社とのやりとり全般を担うこととなる。
システム導入で見込める効果は、製作図作図〜確認〜承諾までのアルミ製サッシ生産フローの時間短縮に加え、BIMデータから自動抽出されたデータを設計作図システムへ自動連携させることで生まれる質疑応答時間の削減とヒューマンエラーの防止。
BIMモデルから抽出するデータは、文字や数値でExcelに書き出された窓の形状や性能に関する情報が対象となる。
サッシメーカーと共有するデータは、BIMデータのサッシパラメーターにあるデータのうち、サッシメーカーが製作図を作図する際に必要な情報を一覧表で明記したパラメーター対応表と、アルミ製サッシの製品仕様で、マンションプロジェクトごとに共通な情報を記したサッシの仕上げ色や要求性能、オプション金具などのマンション専用部向けアルミ製サッシ共通仕様書。さらに、設置箇所ごとのアルミ製サッシの納まりを標準化した図面集となるマンション専用部向けアルミ製サッシ共通ディテール。
システム開発の目標では、業務効率化の各テーマに沿って3段階を設定している。今回のステップ1は、長谷工版BIMを活用したデータ連携スキームの構築とし、次のステップ2は、承諾作業の簡略化による時間短縮や質疑応答の削減。最終のステップ3は、製作図のペーパーレス化による印刷製本業務の削減、CO2排出量削減への寄与とし、段階的に展開していくことで、建設現場の生産性向上と働き方改革に寄与していく。
具体的な機能実装では、BIMモデル承認によるペーパーレス化や次の協調領域として施工分野での活用による業務省力化を目指す。
長谷工コーポレーションは、「各社のDX推進により、Dにあたるデジタル化の部分は進んでいるが、情報連携では、Xにあたる企業側の変革が進まず、デジタル化の効果が限定的。そのため、システムを持続可能にするためには、協調領域を拡大する必要があり、実現すれば煩雑で無駄が多く労力の掛かっていた1対1の取り組みから解放され、ステークホルダー全員がWin-Winの関係になる」と標ぼうしている。
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