5Gを賃貸物件の室内に取り込む、大東建託のDX推進室が実証実験を開始:5G
大東建託のDX推進室は、5G電波を屋内に引き込み、室内での高速通信を可能にする実証実験を行う。今後は、大東建託で管理する賃貸建物の通信環境の整備を進めたい考えだ。
大東建託は2023年3月17日、5Gを屋内に引き込み、室内での高速通信を可能にする実証実験を開始したと発表した。
電波の減衰を回避するネットワーク構築に向けた実証実験
近年、コロナ禍を経て加速したテレワークや巣ごもり需要など、生活者のライフスタイルの変化に伴い、これまで以上にインターネット環境に対する関心は高まっている。その中、5G電波は次世代の通信インフラとしての技術革新と、日常生活の利便性向上が期待される一方で、電波の特性上、住宅やオフィスなどの屋内で効率的に電波を届けることが難しく利用が進んでいない。
5Gは、企業や社会インフラでのDX実現の基盤として注目されており、「高速大容量」「低遅延通信」「多数同時接続」といった面で優れている一方、1つの基地局でカバーする範囲が狭く、直進性が高いのが特徴となっている。そのため、外壁や窓ガラスなどの障害物があると電波が減衰しやすく、電波の届きにくい屋内では通信環境が不安定になることから、5Gの利用は困難とされてきた。
大東建託グループでは2016年7月より、通信速度最大2Gbpsの高速無料インターネットWi-Fiサービス「DK SELECTネットサービス」の提供を開始しており、サービス対象の建物では入居後すぐに無料で部屋に備え付けの無線LAN機器を使って、インターネットを即利用できる。既存の管理建物についても、サービス提供に向けた導入工事を順次進め、サービス対象の賃貸建物も増やしており、入居者の利便性向上に役立てている。
今回、入居者のインターネット利用のニーズやライフスタイルに合わせた、さらなるサービス拡充に向け、良好な室内ネットワーク環境の提供を目指し、5G電波を室内に取り込むネットワーク構築の実証実験を実施するに至った。
実証実験は2021年12月より、室内に入る5Gの減衰を低減させることを目標に、首都圏エリアにある大東建託グループの管理建物の住戸で開始。検証にあたっては、5G電波は有線LANケーブルを用いてバルコニーに設置した屋外装置「ODU」から、室内側の室内装置「IDU」に直接引き込むことで、建物による電波の減衰を防ぎ、室内で5G電波をWi-Fi利用できるようにした。
今回の実験では、屋内外の5Gの通信速度を比較することで、電波減衰の影響を調査した。将来的な商用化も見据え、検証には受信する電波改善の他、商用利用可能な機器構成や量産化の検討なども段階的に行っており、現在は、第1段階の導入シーンを想定した機器設置工事と商用機器の動作確認が終了した。
第1段階の実証実験1は、2021年12月に神奈川県横浜市の大東建託が管理する建物で実施し、5G基地局に近い管理建物で仮組の検証用5G電波受信装置機器構成で5G電波を受信。電波減衰対策の有効性を確認した。
続く実証実験2は、2022年10月に社宅利用で大東建託の管理物件を対象に、検証用の技術基準適合認定を取得後、商用構成の5G電波受信装置機器を用い、入居する大東建託グループ社員によって商用機器の動作を確認した。
今後は、今回の実証実験を通じ、大東建託で管理する賃貸建物の通信環境の整備を進め、入居者のさらなる暮らしの利便性向上につなげていく。
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