五洋建設と大栄工機が山岳トンネル工事の防水シート溶着を自動化、NEXCO西日本の現場で実証:山岳トンネル工事
五洋建設は、大栄工機と山岳トンネル工事の防水シートの溶着作業を自動化した「防水シート自動溶着システム」を共同で開発した。防水シート自動溶着システムは、溶着機が溶着ラインのよれやたわみに沿った形でバランスを取りながら、前後左右上下へ移動して自動溶着する。
五洋建設は2023年2月6日、大栄工機と山岳トンネルの防水シートの溶着作業を自動で行う「防水シート自動溶着システム」を共同で開発したと発表した。
足場台車に取り付けたガイドレール上の溶着機が移動して自動溶着
従来、山岳トンネル工事の防水シート溶着は、3人の作業員がトンネル周方向に溶着機を手渡ししながら作業していた。足場台車上の狭く小さな空間で溶着機を操縦して手渡しするため、高所での危険を伴う過酷な作業の1つとされていた。
さらに防水シートの施工は、背面の吹付けコンクリート仕上がり面の凹凸に合わせ、3次元的にたるみをもたせる必要があるために、シートの溶着は熟練工による作業が必要不可欠だった。
今回開発したシステムは、足場台車に取り付けたガイドレール上の溶着機が移動しつつ防水シートを自動で溶着する。自動溶着部本体に組み込んだシーソーやスライド、回転の構造、バランサーにより、溶着機が溶着ラインのよれやたわみに沿った形でバランスを取りながら前後左右上下へ移動することで、自動溶着を実現したという。
溶着機は、溶着速度に合わせて一定速度で移動するので、溶着部の品質を確保する。加えて溶着ローラーの上部にシート固定治具を取り付けることで、しわを残したままシートが溶着ローラー内に取り込まれることを防ぐ。
実証現場は、NEXCO西日本九州支社発注の「佐世保道路弓張トンネル工事」で、24メートル区間の防水工で、作業員1人を監視者に配置した。施工後の現場検証では、溶着ラインの全長で自動溶着し、熟練工など溶着作業員の削減と苦渋作業からの解放を実現した。所要時間は従来と同等で、溶着部の品質が確保されていると、目視と加圧試験で確認された。
今後は、各現場へ導入し、シート展張や溶着部の品質管理など自動化範囲の拡大や溶着速度向上に取り組む他、山岳トンネル工事の施工プロセスの1つ、防水工作業での生産性と安全性の向上を目指していく。
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