山岳トンネルの切羽評価全11項目を自動評価するシステムを開発、安藤ハザマ:山岳トンネル工事
安藤ハザマは、携帯端末を用いて、山岳トンネルにおける切羽評価の全11項目をAIが切羽画像から評価する「AI切羽画像評価システム」を開発した。今後は、AI切羽画像評価システムが適用可能なトンネル工事に導入するとともに、導入現場で取得した切羽画像を用いて岩種別のAI評価モデルの改良を行い、評価精度の向上を図る。
安藤ハザマは、携帯端末を用いて、山岳トンネルにおける切羽評価の全11項目をAIが切羽画像から評価する「AI切羽画像評価システム」を開発したことを2022年11月21日に発表した。
堆積岩種と火成岩種を含む10種類のAI評価モデルを搭載
同社は、ICTにより山岳トンネル工事の生産性を大幅に高める取り組みとして、山岳トンネル統合型掘削管理システム「i-NATM」の開発を推進し、その一環で、AI切羽画像評価システムを開発した。
AI切羽画像評価システムは、山岳トンネルで実施している切羽観察シートの作成を自動化するもので、撮影した切羽の画像をAIでセンシングし、切羽地質評価の全11項目を自動で評価する他、評価結果から切羽の評価点を自動で算出し、切羽観察シートを自動で出力する。
カメラ搭載の携帯端末を併用すれば、OSや機種を問わずに、AI切羽画像評価システムを使えるだけでなく、端末を用いた撮影や切羽評価、切羽観察シートの出力といった作業も切羽から離れず数分で行える。
加えて、国内に分布する主要な堆積岩種と火成岩種を含む10種類のAI評価モデルを作成したことで、国内にあるほぼ全てのトンネル現場に導入でき、精度の高い切羽評価に対応。評価手法については、デジタルカメラやスマートフォン、タブレットといった汎用のカメラ付き携帯端末で取得した画像を評価材料とする。
具体的には、インターネットを経由して取得した画像をサーバ上にアップロードし、サーバ上で切羽の評価を行う。AI切羽画像評価システムの評価プログラムには岩種別に10種類のAI評価モデルが搭載されており、現場に応じた岩種を選ぶことで最適な評価が可能となる。
切羽評価の結果は、各発注者の様式に準拠した帳票で出力でき、各評価項目の区分だけでなく、切羽上の評価分布をヒートマップとして表示する。
既に、安藤ハザマでは、主要な10種類の岩種を評するAI評価モデルについて、評価精度の検証を行っている。検証では、統計解析で精度を測る指標の1つとして「f-1 Score※1」を用いた。
※1 f-1 Score:f-1 Scoreの最大値は1で、指標が1に近いほど精度が良いと評価できる。
f-1 ScoreでAI切羽画像評価システムと地質技術者の評価結果を比較した際には、全項目で0.7以上を記録し、最も高い項目では約0.9の精度で評価可能なことを確認した。ちなみに、システムが評価した支保パターンと実績の支保パターンは全て一致しており、支保パターン選定の評価精度は100%だった。
なお、AI切羽画像評価システムは、AI評価モデルを更新する機能も備えているため、導入現場の地質状況に応じて、AI評価モデルを最適化可能。
同社は、国土交通省東北地方整備局発注の国道13号横堀トンネル工事で、2021年10月に試行を開始した。国道13号横堀トンネル工事では、新生代第三期の火山岩と火山砕屑岩が分布しており、弾性波速度は毎秒0.8〜2.2キロ程度となっている。
そこで、2022年9月時点で160切羽の画像を取得し、AI切羽画像評価システムと従来の目視観察との精度を比較するために、システムの評価区分を活用した切羽評価点と目視観察の評価区分を利用した切羽評価点との比較を行った。
システムの運用当初は、誤差が8%程度だったが、AI評価モデルの更新とともに評価点の誤差は4%程度にまで減少しており、従来の切羽観察手法と遜色ない判定が行えることを確認した。
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