大和ハウス、放射熱8割以上抑制で室内熱中症を防ぐ「低放射折板屋根」:新建材
大和ハウス工業は、室内の暑さの原因となる屋根の放射熱を一般的な折板屋根と比較して80%以上抑制する「低放射折板屋根」を開発した。2023年1月からは、36都府県で本格運用を開始した。
大和ハウス工業は、室内の暑さの原因となる屋根の放射熱を一般的な折板屋根と比較して80%以上抑制する「低放射折板屋根」を開発した。空調設備を導入しない新築の工場や倉庫などを対象に、2019年3月から関東、中部、関西圏で先行採用していたが、2023年1月から36都府県で本格運用を開始した。
猛暑日が年々増加する中、2022年6月の熱中症による全国の救急搬送者数は前年の約3.2倍となる15,969人と、調査開始以来で過去最多となった。熱中症は屋外だけでなく室内でも多く発生し、特に工場や倉庫などで作業する製造業では約半数の46%が室内作業時に発症しており、従業員の熱中症対策が課題となっていた。
その一因として、屋根からの強い放射熱があった。工場や倉庫で多く採用されている折板屋根は、日射により高温化しやすく、強い放射熱が室内を暑くしてしまう。
低放射折板屋根は、折板屋根の下面に低放射裏貼材を接着して放射熱を抑える屋根材で、アルミ系遮熱シートとガラス繊維系断熱材を組み合わせた独自の低放射裏貼材が、日射で高温になった屋根の放射熱を抑える。
2018年6月と2018年8月の実証実験では、同一建物に低放射折板屋根と一般的な折板屋根を採用、低放射折板屋根の室内の体感温度は、一般的な折板屋根の室内と比較して3℃低減できることを確認した。
また、低放射折板屋根は、一般的な折板屋根と同等の高い施工性を維持しつつ、暑さを軽減でき、費用対効果が高い。
室内での熱中症対策として採用される二重断熱折板屋根や遮熱シートは、一般的な折板屋根と比べて部材や施工工程が増え、その分費用も増加するが、低放射折板屋根は一般的な折板屋根と同様の工程で施工できるため、導入コストを抑制できる。二重断熱折板屋根と比較すると、暑さの軽減効果は同等でありながら、導入費用を7割程度に抑えることができる。
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