戸田建設らが福島県で創蓄システムの実証実験、使用電力の55%を再エネに:産業動向
戸田建設は、佐藤工業や村田製作所とともに、福島県で、建設現場での再エネ活用と移設容易な創蓄システムの実証実験を進めている。戸田建設と佐藤工業の拠点に、「All-in-One 蓄電池システム」を採用した創蓄システムを導入した結果、使用電力のうち55%を再エネにすることに成功した。
戸田建設は同社のHPで、佐藤工業や村田製作所と共同で、福島県における再生可能エネルギー導入促進のために、政府の支援事業補助金を活用し、建設現場での再エネ活用と移設容易な創蓄システムの実証研究を実施していることを2020年4月28日に発表した。
受電が困難な工事現場でも再生可能エネルギーを使える蓄電池システム
補助金事業は、2019年10月に採択を受け、2020年2月に完了した。2019年10月の実証研究では、佐藤工業が手掛けるミライアルの東北事業所新築工事と戸田、佐藤、東信JVが施工を担った福島市一般廃棄物新最終処分場建設工事の現場事務所や佐藤工業の伊達支店といった福島県内の拠点に太陽光パネルや創蓄システムを導入。
創蓄システムには村田製作所製リチウムイオン二次電池「FORTELION」を搭載した「All-in-One 蓄電池システム」を採用した。All-in-One 蓄電池システムは、独立した電源供給が可能なことから、施工エリアの長い河川や道路工事、山間部など受電が困難な工事現場でも再生可能エネルギーを使える。また、折板葺き屋根と縦ハゼ葺き屋根でも取り付けられ、移設も容易だ。
FORTELIONは、強い衝撃や圧力が加わった場合などでも発火しにくく、高負荷がかかった際も電池の機能を安定的に発揮する。パワーコンディショナーと蓄電池が一体型のため設置が簡単で、太陽光発電と蓄電池を同時に使用できるため安定した電源供給が行える。
各拠点に設置した創蓄システムは、専用リモコンで操作することによりクラウド経由で、各拠点での発電量や充放電量(蓄電状態)、系統電力データを集約するシステムを搭載しており、各情報を監視できるようになっている。
各現場に創蓄システムを配置した結果、使用した電力のうち、再生可能エネルギーを用いた電力の割合が最大で55%であったことをチェックし、建設現場での再生可能エネルギー利用の効果を確かめた。
創蓄システムの事業は、2020年度に政府から継続事業として採択を受け、3社は2021年内にビジネススキームの構築を目指し、現在蓄電池システムの活用による建設現場でのCO2排出量削減を検証している。
また、2020年度は、再生可能エネルギーの利用拡大に向け、蓄電池システムの増設、太陽光パネルの架台提案と多様な屋根への対応、取得データの分析による最適稼働制御機能の追加を行い、全国の建設現場への展開に向けて実証実験のエリアを拡大する。
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