新たな構造形式の大屋根を採用した自転車競技場が千葉競輪場の跡地に竣工、清水建設:プロジェクト
JPFは、清水建設の設計施工により竣工した自転車競技場「千葉JPFドーム」を2021年10月2日に供用開始した。なお、これまで日本国内で、自転車競技の世界選手権に対応できる施設は、静岡県伊豆市の自転車競技「伊豆ベロドローム」のみだったため、日本人選手のレベルアップにも役立つ施設として期待される。
清水建設は、千葉市中央区弁天で開発を進めていた自転車競技場「千葉JPFドーム」が2021年3月に竣工したことを発表した。
周長250メートルの木製トラックは世界選手権仕様
千葉JPFドームは、千葉公園の活性化をけん引する施設として、千葉競輪場の跡地に計画された大規模な自転車競技施設(ベロドローム)で、約2500席の観客席を備え、設置された周長250メートルの木製トラックは世界選手権仕様になっている。
設計上の特徴は、個性的なデザインのドーム大屋根をシンプルな鉄骨構造で表現している点。大屋根は、直径198メートルで、球の表面を楕円に切り取った形状をしており、膨らみ(高さ)を抑えることで、周辺施設と調和させている。内観は、大屋根が薄く軽やかな作りで観客席と木製トラックを包み込み、一体感のある内部空間を演出。
上記の大屋根を実現するために、清水建設は新たな構造形式「リングシェル」を考案した。リングシェルは、単層の鉄骨トラスで、楕円形かつドーム状の大屋根で骨組として機能している。構造の骨子となるのは、鉄骨トラスの剛性と耐力を高めるために大屋根外周部に配置したケーブル(弦)。
具体的には、72本のケーブルが、鉄骨トラスの外周部と大屋根中央下部に設けた直径84メートルの鋼製リングを放射状に連結しており、緊張されたケーブルにより鉄骨トラスが外側に広がる力を低減し、大屋根の骨組トラスを構造的に完結・独立させている。また、鉄骨精度の確保が施工上の課題となったが、徹底した計測管理により、スパン119メートルに対して最大でもわずか56ミリのたわみで収まった。
千葉JPFドームの概要
千葉JPFドームは、S造(一部RC造)地下1階/地上4階建てで、高さは27.2メートル、延べ面積は約1万4300平方メートル。所在地は千葉市中央区弁天4-1-1。設計・施工は清水建設が担当し、工期は2019年11月〜2021年3月。
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