風で生じる縦格子手すりの振動音を低減する部材を開発、大成建設:防音
大成建設は、集合住宅のバルコニーなどに設置される縦格子手すりで生じる風の振動音を大幅に低減する部材「T-Silent Wind Noise」を開発した。今後は、縦格子手すりから発生する風振動音の低減対策として、T-Silent Wind Noiseを提案していく。
大成建設は、集合住宅のバルコニーなどに設置される縦格子手すりで生じる風の振動音を大幅に低減する部材「T-Silent Wind Noise(ティーサイレント ウィンドノイズ)」を開発したことを2022年11月25日に発表した。
風振動音を約20〜55デシベル低減可能
国内では近年、タワーマンションなどの高層建物が増加し、縦格子手すりや日よけと目隠しに用いるルーバー材などの建物外装材に、風が作用して発生する風の振動音が問題となっている。
とくに、縦格子手すりでは、毎秒5メートル程度の低風速で、風の振動音が起きる場合があり、発生音そのものが耳障りになるだけでなく、固体伝搬音※1として振動発生箇所から遠く離れた室内にも影響を及ぼす可能性がある。
※1 固体伝搬音:部材で発生した振動が部材固定と支持部により構造躯体を介して広範囲に伝搬し、伝搬した室の内装材から音として再び放射される現象。
こういった風振動音への対策として、これまで縦格子部材に直交する横つなぎ材を追加設置することで、発生振動を抑制する方法などが適用されてきたが、風振動音を完全に抑え込むことは難しい。さらに、外部からの意匠性や室内からの眺望を妨げるだけでなく、横つなぎ材に足を掛けて、昇降し児童が転落する可能性もあり、安全性確保などの課題があった。
そこで、大成建設は、風振動を低減するポリウレタン系防振材を加工し、縦格子手すりに密接するようにはめ込むことで、風振動音を大幅に低減する部材のT-Silent Wind Noiseを開発し、風洞実験によりその有効性を検証して確認した。
具体的には、縦格子手すりの最下部にT-Silent Wind Noiseを挿入し、多様な風振動音に対する低減効果を風洞実験によりチェックした。その結果、T-Silent Wind Noiseの適用により室内からの景観や安全性を損なうことなく、風振動音を約20〜55デシベル(dB)低減することを実現する。
加えて、T-Silent Wind Noiseでは、軽量・コンパクトな形状の「連続タイプ」と「ピースタイプ」の2種類を用意しており、風振動音が発生する場所に応じて適したタイプを選べ、施工に際して工具が不要なため、後付けでも容易に装着できる。
また、実際の建物に設置されている縦格子手すり(総延長約22メートル)への取付作業では、作業員2人により1時間程度で施工が完了した。なお、縦格子手すりからの着脱防止を目的とした突起形状をT-Silent Wind Noiseに付加することや意匠性を考慮した着脱防止用アルミ製カバーも取り付けられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東急建設らが現場の低周波音に有効な軽量防音パネルを開発、約10db以上の遮音効果
東急建設は、旭機工や松陽産業と共同で、加圧膜を利用した軽量な防音パネル「(仮称)低周波音用・軽量防音パネル」を開発した。同社は現在、トンネル発破掘削工事の防音扉や防音シェルター、住宅に近接するシールドトンネル工事現場(泥水処理用の振動ふるいの防音ハウス)、建設現場と工場に設置された発電機の防音対策などで、低周波音用・軽量防音パネルの導入実績を増やしつつ、都市部で発生するさまざまな騒音対策への活用も視野に展開している。 - クッション性能の低下を長期間抑制する防音マットを開発、大成建設
大成建設は、床衝撃音の低減機能と転倒時の安全性を兼ね備え、長期間性能を保持できる防音用マットを開発した。集合住宅や学校、医療施設などへの展開を予定しており、2020年4月から田島ルーフィングが販売を開始する。 - RC造と同等の遮音性能を実現する木造二重床システムを開発、長谷工コーポレーション
長谷工コーポレーションは、長谷工グループの細田工務店と共同で、RC造と同等の遮音性能を実現する「木造高遮音二重床システム」を開発した。 - 大成建設が木材を利用した遮音間仕切壁を開発、遮音等級「Rr-55」を達成
大成建設は、CLT(直交集成板)などの木質系材料と石こうボードを組み合わせて、高い遮音性能と意匠性を兼ね備えた間仕切壁「T-WOOD Silent Wall」を開発した。T-WOOD Silent Wallは、適用することで、遮音性能に優れた木質仕上げの建築空間を構築し、木材の利活用促進による脱炭素社会の実現に貢献する。また、今回開発した技術の遮音性能は、日本建築総合試験所で空気音遮断性能試験を実施し、有効性を確認した。