床版撤去工事の作業時間を従来工法比で20%削減する新工法、清水建設:施工
清水建設は、合成桁のコンクリート床板撤去プロセスを効率化する床版切断技術「床版クールカット工法」を開発した。床版クールカット工法は、通常の床版撤去プロセスとは異なり、鋼桁と床版の接合部を切断する前に桁間の床版を先行撤去する作業ステップを省略でき、ユニット型切断装置を使用し約20%の生産性向上効果が見込める。
清水建設は、既設高速道路を対象とした大規模更新工事の生産性向上技術として、合成桁のコンクリート床板撤去プロセスを効率化する床版切断技術「床版クールカット工法」を開発したことを2022年11月24日に発表した。
1ブロックの切断距離を桁幅分に限定しワイヤソーの張力を安定
国内では、高度成長期に建設された高速道路の老朽化が懸念される中、床版の取替や桁の補強を主体とする大規模更新工事の需要が増加している。鋼桁とコンクリート床版を一体化した合成桁の床版取替工事では、既設コンクリート床版の撤去に要する時間が全作業の約3割を占め、工事全体の生産性向上にはこういった作業の効率化が求められている。
一方、合成桁の床版撤去工事では通常、桁間のコンクリート床版を先行して撤去した後、鋼桁と床版の接合部を橋軸方向にワイヤソーで切断する工程が採用される。なお、桁間床版の先行撤去は、床版撤去工事のプロセス全体の1割を占めており、この作業を省略することは生産性の向上につながる。
そこで、清水建設は、床版クールカット工法を開発した。床版クールカット工法は、水平・鉛直切断の双方に対応するユニット型のワイヤソー切断装置「基礎躯体クールカット」を用いて、コンクリート床板と鋼桁の接合部を床版上から橋軸直角方向に水平切断できる。
具体的には、基礎躯体クールカットは、主に基礎構造物におけるブロック切断の効率化を目的に開発したワイヤソー切断装置で、ブロック切断時には、対象ブロックの外周3辺に設けたスリットの底部にワイヤソーを落とし込んだ後、残る1辺に配置した切断装置側にワイヤソーを横引きすることでブロック底面を水平切断する。
さらに、床版を橋軸直角方向に水平切断する床版クールカット工法では、1ブロックの切断距離が桁幅分に限定されるため、ワイヤソーの張力が安定し、切断精度が高まる。
これにより、鋼桁の損傷を防ぐため、切断時に残しておく床版コンクリートの厚みを20ミリ程度まで縮減でき、ウォタージェットにより残コンクリートを取り除く作業の軽減も図れる。加えて、容易に移設可能なユニット型切断装置の導入効果も含めると、撤去作業に要する時間を従来工法と比べて約20%減らせる見込みだ。
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