清水建設と日本ファブが既存品より4トン軽量化した取り換え用PCa合成床版を開発:新工法
国内の高速道路における大規模な更新や修繕工事が本格化している。事業総額は4兆円とされており、その半分を占めるのが床版取り換え工事だ。清水建設はこういった市場のニーズを考慮し、日本ファブテックとともに、床版取り換え工事を効率化する新PCa床版を共同開発した。
清水建設は2019年12月5日、高速道路の大規模更新に伴う床版取り換え工事向けに、軽量で優れた施工性を備えたPCa合成床版「SLaT-FaB床版」を日本ファブテックと共同開発したことを発表した。
軽量コンクリートを採用
SLaT-FaB床版は、縦10×横2メートル、厚さが180ミリで、重さは1枚あたり8トン。4トン軽量化され、現行よりも薄くて軽かった既存床版と同等になった。軽量化は、床版接合部の配筋方法を工夫して、厚さと接合部の幅を抑えるとともに、軽量コンクリートを採用し、床版内に角形鋼管を埋め込み、空隙を設けることで実現した。
配筋方法の特徴は、床版長手方向の接合面に250ミリピッチで端部がT型をしたTヘッド工法鉄筋を導入したことだ。接合面から180ミリ突出した40本のTヘッド鉄筋が接合部に打設するコンクリートにしっかり定着するため、定着力を高めるための特殊な配筋が不要になる。結果として、床版厚を既設床版と同じ180ミリに抑制することと、コンクリートを打設する接合部の幅を400ミリから200ミリに削減した。
また、通常使用するコンクリートと比べると、約80%の比重となる軽量コンクリートを取り入れるとともに、コンクリートに中空の鋼管を埋め込むことで床版容積の約10%を空隙にした。成果として、現行の取替用PCa床版が抱える施工上の課題を全て解決し、優れた施工性を確保したという。なお、SLaT-FaB床版の構造性能については、コンクリート材の耐久性能試験などを実施する外部試験機関であるG&U技術研究センターから認定を受けている。
SLaT-FaB床版を開発した要因には、大規模インフラ構造物のリニューアルが今後、大幅に見込まれていることがある。推定では、総工事費は4兆円に上るとされており、大半を占めるのが「床版取り換え工事」。主な施工手順は、既設床版の撤去、工場で製作したPCa床版を既設桁(けた)へ敷設することおよび、床版と床版接合部の鉄筋コンクリートによる連結となる。
現行の取り換え用PCa床版は、継手(つぎて)が内蔵する配筋の関係で、既設床版よりも60ミリ厚かった。厚いことで、取り換え後の床版重量が既設床版よりも重くなり、既存桁の補強が必要になることから、そのスリム化が課題になっていた。
清水建設は、SLaT-FaB床版を受注した高速道路の更新や修繕工事の改善提案に織り込み展開し、適用拡大を図っていく。
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