連続ベルトコンベヤーのずり出しを効率化する台車を開発、安藤ハザマら:山岳トンネル工事
安藤ハザマは、ICTにより山岳トンネル工事の生産性を高める取り組みとして「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM)」の開発を推進している。その一環として、タグチ工業とともに、山岳トンネルでの連続ベルトコンベヤー方式によるずり出し作業の効率を高める「日々延伸型テールピース台車」を開発した。
安藤ハザマは、タグチ工業とともに、山岳トンネルでの連続ベルトコンベヤー方式によるずり出し作業で安全性と施工性を向上する「日々延伸型テールピース台車(タグチ工業と共同で特許出願中)」を開発したことを2022年3月22日に発表した。
別途配置していた切羽用電源台車を不要に
一般に、山岳トンネルの連続ベルトコンベヤー方式によるずり出し作業は、発破により破砕した掘削ずりをホイールローダーで集積し、切羽後方に設置した移動式クラッシャーに投入する。投入したずりは、クラッシャーにてベルトコンベヤーで運搬可能な大きさまで破砕した後に、後方の連続ベルトコンベヤーに載せ替えて、トンネル坑外の仮設ヤードまで運ぶ。
上記の手法は、従来のタイヤ方式と比較して、排気ガスの発生をカットし、環境に優しいだけでなく、坑内の重機往来を減らせ、安全性が高いといった長所がある。
しかし、ベルトコンベヤーの延伸作業には、高所作業車などの重機を使用し、多くの人数と時間が必要だった。延伸作業を行う間は掘削ずりの運搬も困難なため、月に2〜4日の期間で、掘削作業が中断されるケースが多く、トンネル掘削への影響を抑えることが求められていた。
そこで、安藤ハザマは、タグチ工業とともに、日々延伸型テールピース台車を開発した。日々延伸型テールピース台車は、吊りチェーン設置ステージや中間フレーム組み立てステージ、トランス・電気格納ステージといった3つのステージとベルトの仮受け機構を装着することで、延伸作業の時間短縮と安全性向上を実現する。
具体的には、吊りチェーン設置ステージと中間フレーム組み立てステージにより、これまで高所作業車を必要とした業務が台車上から行えるため、トンネル掘削作業を阻害せずに素早く作業に移行可能。さらに、トランス・電線収納ステージにより、坑内に別途配置していた切羽用電源台車を不要とする。
加えて、取り付けられたキャリアベルト受けフレームとリターンベルト受けローラにより、コンベヤーベルトを仮受けすることで、延伸作業を連続した作業工程とする必要が無くなり、作業員の空き時間を有効に使える。
今回の台車は、1回の延伸で中間フレーム2本(7.2メートル)まで対応する他、日々延伸することで、切羽(きりは)と移動式クラッシャーの間隔を常に35〜45メートルに保ち、ずり投入を行うホイールローダーの走行距離を改善し、CO2削減にも役立つ。
既に、安藤ハザマでは、模擬トンネルでの延伸試験で、延伸開始から本復旧までの作業全体を約15分で完了し、日々延伸型テールピース台車の効果を確かめた。北海道小樽市の「後志トンネル工事」でも、日々延伸型テールピース台車を適用し、トンネル掘削作業と並行して中間フレームの組み立てを行うなどの効率化を実現した。
また、各現場では、延伸作業時間の改善やホイールローダーでの運搬距離短縮によるずり出し作業時間の改善で、生産性が向上し働き方改革(4週8休)にも貢献している。
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