全長142mでクレーンの最大揚重能力が2500tの自航式SEP船が完成、清水建設:導入事例
清水建設は、約500億円を投じジャパン マリンユナイテッドに建造を発注した、世界最大級の搭載能力とクレーン性能を備えた自航式SEP船が完成したことを公表した。BLUE WINDは今後、約4カ月に及ぶ多様な試験とオペレーション訓練を経て、5兆円超の市場規模となる洋上風力発電施設建設工事に投入され、洋上風車の施工で卓越したパフォーマンスを発揮することが期待されている。
清水建設は、約500億円を投じジャパン マリンユナイテッドに建造を発注した、世界最大級の搭載能力とクレーン性能を備えた自航式SEP船が完成したことを2022年10月6日に公表した。同日には、自航式SEP船が停泊する兵庫県相生市相生のJMUアムテック事業所で命名式を開き、SEP船に「BLUE WIND」と命名し、船名を披露した。
8MWの風車なら7基分の全部材を一度にフルサイズで一括搭載可能
完成したBLUE WINDは、全幅が50メートル、全長は142メートル、総トン数は2万8000トン、クレーンの最大揚重能力は2500トン、最高揚重高さは158メートルで、世界有数の作業性能を備えている。
さらに、水深10〜65メートルにおける海域での作業に対応し、作業時には4本の脚を海底に着床させ、船体をジャッキアップさせることで海面から切り離し、波浪に左右されない作業条件を確保する。
なお、最大で、8MWの風車なら7基分、12MWなら3基分の全部材を一度にフルサイズで一括搭載できるため、大型風車の施工で優れたパフォーマンスを発揮する他、太平洋側の特徴である10秒程度の長周期波浪(うねり)でも船体のジャッキアップとダウンが可能で、既存のSEP船に比べ非常に高い稼働率を実現する見込みだ。
2022年10月7日には、BLUE WINDはアムテック事業所から出港し、さまざまな試験を行いながら四国沿海を時計回りに航行し、10月20日に広島県内の海域に入っている。BLUE WINDの航行計画では、約4カ月間にわたり、瀬戸内海で船体のジャッキアップとダウンを行い、クレーン操作をはじめとする多様な試験とオペレーションの習熟訓練を実施する。
加えて、現場での稼働は、2023年3月からで、初めにウェンティ・ジャパンが洋上風力発電施設の開発を計画している富山県下新川郡入善町沖で、3MW風車3基の施工を手掛ける。その後、北海道の石狩湾で、グリーンパワーインベストメントが2007年に事業をスタートした、日本初の8MW大型風車を採用した国内最大級の商用洋上風力発電所「石狩湾新港洋上風力発電施設」の施工に向けて2023年6月中に室蘭港で艤装を整え、同年7月に施行を開始する。
今後、両社は、日本政府の「2050年カーボンゼロ宣言」を踏まえ、日本各地で洋上風力発電施設の建設プロジェクトを本格的に展開する見通しだ。
また、清水建設は、国内外の発電事業者からBLUE WINDによる施工検討依頼を受けており、こういった建設需要を着実に取り込み、洋上風力発電施設施工のトップランナーを目指す。
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