KDDIが次の段階と目する“スマートドローン”で何ができるか?通信オプションにスペースX“Starlink”も:Japan Drone2022(2/2 ページ)
KDDIが2022年1月に100%子会社で設立した「KDDIスマートドローン」。同社が呼称するモバイル通信に対応した“スマートドローン”は、飛行エリア、コスト、スピードなどの優れたメリットがあり、物流、点検、計測などでの活用が期待されている。ただ、その運用には、通信や管理でポイントが存在する。
ドローンの遠隔運用に必要な2つの技術
スマートドローンの実用化には、「モバイル通信」と「運行管理」の技術が必須となる。4G LTEなどのモバイル通信は、飛行するドローンと操縦者などとの通信環境を確実に確保することで、安全な遠隔飛行や長距離飛行がもたらされる。一方の運行管理は、ドローン単体の監視や制御に加え、複数のドローンを管理し、衝突回避などによって安全に運用する技術となる。
今回、セミナーに登壇したKDDIスマートドローン サービス企画部部長 松木知明氏は、「KDDIはこれまでにモバイル通信と運行管理の開発に力を入れてきた」とし、2017年にモバイル通信による完全自律飛行に日本で初めて成功したことや2018年にNEDO(研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からレベル4の運行管理システムの開発を受託したこと、さらに2020年には長野県伊那市で国内初となるドローン配送の商用導入などの成果を説明した。
松木氏は、2022年12月にドローンのレベル4運用が解禁されることに触れ、「(レベル4での運用では)航空機との衝突回避などに向けた管制システムも欠かせない」と語る。そのため、全国13地域で52機のドローンを同時に飛ばし、運航管理システムで一元管理の実証を実施していることも紹介した。
スマートドローンの導入を支援するサービス/ツール群
KDDIスマートドローンは、スマートドローンの導入に対して、2つのサービスを提供する。まず、点検や測量、監視といった用途に応じて、導入から運用までの環境とノウハウをまとめた「用途別ソリューション」がある。また、スマートドローンの運用に必須の基本パッケージを核に、必要なオプションを追加できる「スマートドローンツールズ」も用意している。
用途別ソリューションでは、KDDIスマートドローンがこれまで蓄積した用途別の知見を生かし、導入から運用までをサポート。スマートドローンが初めてのユーザーでも、容易に利用できる。用途例としては、風力発電施設の点検では、水平軸型風車のブレードに沿ったドローンの飛行は熟練のオペレーターでも難しいものだが、4方向からドローンを飛行させて自動で点検するオートフライトが既に実現できているという。
また、スマートドローンツールズは、基本パッケージ(モバイル通信、運行管理システム、クラウド)に、オプションとして高精度測位、城区の電波測定、小型気象センサーなどを用意。既にドローン運用に一定のノウハウを持つユーザーが、より高度な利用や新規サービスの創出が可能になる。
スマートドローンツールズでは、米スペースXの“Starlink”の利用オプションも予定されている。人工衛星を使った通信サービスを利用することで半径3キロほどの通信エリアをカバー。今までは運用できなかった広範囲のエリアで、飛行中のドローンとの通信が可能になれば、活躍の場がさらに広がる。
ちなみに、ドローンの提供機体に関しては、沖合まで飛行した後に水中に潜る水空合体ドローンも検討されている。
最後に松木氏は、KDDIスマートドローンが提供する各種ソリューションで、「ユーザーがドローンで思い描くことを実現し、自由に飛べる世界を一緒に作っていきたい」と結んだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「通信の力でドローン機能を拡張」KDDIスマートドローンが狙う5つの領域
LTE上空利用で、ドローンの可能性を広げるKDDIスマートドローンのサービス。Japan Drone2022では、「物流」「測量」「点検」「監視」「未来の技術」の5領域での同社の挑戦と、それを支える機体を披露した。 - フェイルセーフ機能拡張や遺失ドローンの捜索が可能に、NESが開発を進める「高可用性ドローン基盤」
NECソリューションイノベータは、長年にわたりサーバ上で稼働する高可用性クラスタリングソフトウェアの開発を行ってきた。最近では、ソフトウェア開発で培った技術をドローンの運用にも応用することを試みている。 - 飛行距離2000km!テラ・ラボが災害対応の長距離無人機“空飛ぶイルカ”を開発中
気候変動の影響のためか、このところ日本各地で、大雨や台風などの自然災害が頻発するようになってきている。テラ・ラボのドローン「テラ・ドルフィン」(別名:“空飛ぶイルカ”)は、災害発生後に被災地の状況を迅速に把握するために開発された機体。 - JUIDA 千田副理事長に問う、「社会実装元年」で幕開く“DaaS”時代と建設分野でのドローン用途
無人航空機の登録が義務化され、有人地帯での目視外飛行(レベル4)解禁も間近に迫っている。2022年をドローンの社会実装元年と位置付けるJUIDAは、DaaS(Drone as a Service: ダース)時代の到来を見据えた専門家養成講座の新設やテクニカルレビューの創刊など、日本でのドローン産業のさらなる発展を下支えする。 - ドローン飛行に不可欠!登録制度に対応する用途別の“リモートID端末”
2022年6月20日に始まった「無人飛行機の登録制度」では、“未登録”の無人航空機(ドローン)の飛行が原則禁止されている。運用に際しては、機体に登録記号を表示し、電波を使って機体の識別ができる「リモートID」を搭載することも定めている(100グラム以上のドローンが対象)。 - 長時間のドローン飛行を可能にするロボデックスの「水素燃料電池システム」
多くのドローンでは、バッテリーが電力源として使われている。しかし、容量があるため、長時間の連続飛行には多くのバッテリーを積載しなければならない。しかし、バッテリー自体は重く、ドローンの運動性を損ねてしまい、複数を載せたドローンでは、そもそも飛ぶこともできない。