大成建設が土壌汚染対策支援システムの機能を拡張、場所と時間を選ばず情報管理可能に:土壌汚染対策
大成建設は、土壌汚染の調査と対策で役立つ業務支援システムとして2020年に開発し適用を進めてきた「T-CIM/SoilReme」の機能を拡張した。今回の機能拡張では、出来形管理帳票の作成や浄化工事の進捗状況を示す3次元モデルの作成などが行える3D汚染情報ビュワーと地下水モニタリング管理システムの機能を追加した他、タブレット端末により場所と時間を選ばず情報管理できるようになった。
大成建設は、土壌汚染の調査と対策で役立つ業務支援システムとして2020年に開発し適用を進めてきた「T-CIM/SoilReme」の機能を拡張したことを2022年9月13日に発表した。
取得した情報を3次元図面にひも付けてシステム上で一元管理可能に
国内の土壌汚染調査や対策工事では、土壌汚染対策法に基づき、汚染物質ごとに調査図面やその結果などを整理し帳票として保管することが求められている。そのため、対象地域を10メートル四方の範囲で区切り、汚染物質別に深さ1メートルごとの汚染状況や対策状況を正確に把握する必要があった。
そこで、大成建設は、上記の複雑で多数の情報を関係者間で共有し、円滑に合意形成を行うツールとして、土壌汚染調査/対策業務支援システムのT-CIM/SoilRemeを開発した。
今回の機能拡張では、対象地域の汚染状況、浄化対策工事、地下水モニタリングといった情報について、汚染土壌のトレーサビリティー※1を確保しながら一元管理し、関係者で共有することができる機能を追加し、システム全体の高度化を図った。
※1 汚染土壌のトレーサビリティー:汚染土壌に含まれる汚染物質や汚染濃度などの属性情報だけでなく、対策時の掘削除去、場内および処理施設への移動履歴など、汚染土壌が適正に取り扱われていることを確かめられる記録。
具体的には、T-CIM/SoilRemeでは、関係者のみがアクセス可能なクラウドサーバ※2を活用し、現場で入力した出来形値やモニタリングデータを基に、3次元図面や一覧表・グラフなどの帳票を自動作成しクラウド内に保存するため、最新のデータや図面を迅速に関係者間で共有することを実現している。
※2 クラウドサーバ:厳重なセキュリティを付与し案件毎に特定した関係者のみアクセス可能。
加えて、今回の機能拡張により、タブレット端末でも汚染情報などの閲覧とデータ更新が行えるようになり、時間や場所を選ばずに全ての情報を扱えるようになった。
さらに、従来は別々に管理されていた土壌汚染調査、対策業務(掘削・搬出管理まで含む)、工事完了後のモニタリングといった全情報を、3次元図面にひも付けてシステム上で一元管理するため、汚染土壌のトレーサビリティーを確保するとともに各業務の合理化が図れる。
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