土壌工事でヒ素など重金属の流出を防ぐ吸着シートを発売、凸版印刷:新建材
凸版印刷は、建設工事の土壌掘り起しで発生するヒ素などの有害物質の重金属が、雨などで流出することを防ぐ吸着シートを開発した。
凸版印刷は、ケー・エフ・シー、イーエス総合研究所と共同で、トンネル施工や建設工事時に発生する土壌汚染対策で使用する重金属を吸着する「パデムシート」を開発し、2020年3月から、施工業者に向けて、1平方メートルあたり2万円台で販売を開始する。
重機を使用せず、そのまま広範囲に敷設が可能
パデムシートは、ヒ素やセレン鉛、六価クロム、フッ素、カドミウムといった重金属を含む土壌を処理することを目的に開発した吸着材を均一に充填した特殊シート。工事などで土地を掘り起こした際、土壌から流れ出る溶出水に基準値を超える重金属が含有されていた場合は、適切に処理することが義務付けられている。有害物質である重金属が雨などにより、河川や海に流れ出す恐れがあるためで、 環境汚染とともに魚介類を通じて人体に悪影響を及ぼす危険性があることも問題視されている。
有害物質の流出防止策は、土壌を遮水シートで覆う「封じ込め工法」や不溶化材を使用して重金属を含んでいる土壌を固める「混合固化工法」がある。しかし、そうした工法は遮水シートの劣化や混合品質の不安定さといった課題があり、近年は吸着材を下敷きとする「吸着層工法」が注目されているという。
しかし、吸着層工法は、混合固化工法と比べると安価に施工できるが、 重機を使用して重金属を含まない土と吸着材を混合しなければならず、現場でも吸着層の均一性を保つ品質確認が必要だった。
そこで3社は、吸着材を均一に充填することで、高い品質と柔軟性、透水性を有するシートの研究に着手。重金属を吸着する特殊樹脂層の上に親水性の不織布を貼り付けシート化し、NETIS(新技術情報提供システム)登録で「吸着層工法」の実績がある吸着材をシートにまんべんなく充填することで、ムラなく重金属を吸着するパデムシートを製品化させた。
パデムシートは適度な透水性を持っていることに加え、シート同士を熱溶着で接合させるため、吸着層を隙間なく構築でき、高濃度の溶出水が河川などへ流れ出すのを防げる。
施工時には、厚さ2ミリの柔軟性があるシートでロール状に納品されるため、重機を使用せずにそのまま広範囲に敷設でき、工程数の削減による作業効率の向上が見込める。谷などの法面や複雑な地形でも、より簡易的に施工が可能になる。
パデムシートの仕様は、吸着材量が3キロ毎平方メートルで、サイズは幅1.5メートル×長さ20メートル。吸着材の提供はイーエス、製造を凸版印刷、2020年3月からの販売はケー・エフ・シーがそれぞれ担当する。価格は1平方メートルあたり、2万円弱の予定。
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